幻想水滸伝V
ルク坊(坊ちゃん=ケイ・マクドール)          
02.9.6          
 特効薬の処方箋

不覚だった…。

自分を中心に回りつづける天井をただぼんやり眺めつつ、ルックはため息をついた。
まさか風邪をひくなんて思わなかった。
発熱、咳、喉の痛み、関節痛…ありとあらゆる風邪の症状に見舞われては、
さすがのルックもベッドにダウンせざるを得ない。

本当に…不覚だ…。

いい加減天井を見ているのにも飽きたので、ゆっくり目を閉じた。
かなりの熱が出ているのだから体は熱いはずなのに、何故か酷く寒い。
暖を取る為に布団を引き上げれば、今度は息苦しさに鼓動が早くなる。
最悪の気分だった。
「ルック様」
遠慮がちな声がドアの向こうから聞こえた。
「起きてるよ」
痛む喉に耐え、辛うじて返事をするとドアが開いてセラが入ってきた。
手に水桶とタオルを持っている。
桶の中で氷がカラリと涼しげな音を立てた。
それをサイドテーブルに置いて、ぬるくなった額のタオルを氷水で冷やした新しいものと
取り替える。
心地よい冷たさにルックは薄く目を開いた。
心配そうにルックの顔を覗き込みながら、セラは遠慮がちに切り出す。
「ところでルック様」
「何」
「実は…その…」
「?どうしたんだい、言ってごらん」
珍しく言葉を濁すセラに、ルックは続きを促した。
「…実はルック様が元気になるようにと、お見舞いを連れて来たのですが…」
「見舞い…?連れて来たって…?」
訝しがるルックを真っ直ぐに見て、意を決したようにセラは言った。
「ケイ様です」

「ルック風邪ひいてるんだって」
懐かしい声が聞こえてルックは顔をしかめた。
「!…ケ…っ!!」
ひょっこりと姿を現した、その人物の名を呼ぼうとして咳がそれを遮った。
「あぁ、無理して声を出さないほうがいいよ。喉痛いんだろ?」
「…」
安否を気にしつつも、妙に楽しそうなその顔。
久しぶりに見る、トランの英雄ことケイ=マクドールの顔であった。
「何だか僕が寝込んでいて嬉しそうだね」
「えーそんな事無いよ」
言葉では否定しつつも、ケイの表情は変わらず楽しそうだ。
「もしそう見えるなら、久しぶりにルックと会ったからかな」
「どうだか」
「セラちゃんに頼まれて久しぶりに顔見に来たんだけど、まさかルックが風邪ひいてる
なんてね。これぞまさしく…」
「鬼の霍乱(かくらん)とでも言う気かい」
ケイの言葉を先読みしてそう言うと、ケイはにっこり笑った。

「違うよ。これがホントの風邪の魔道師!なんてね」

「〜〜〜〜〜っ!」
あまりのくだらなさに一言言おうと息を吸った瞬間、咳が込み上げた。
喋ることもできず、ルックは背をさするケイをただ睨みつける。
わかっているくせに気付かぬ振りで、ケイは自分の言葉に声を殺して笑っている。
そして笑いながら言った。
「久しぶりに会ったのにこれじゃつまんないしさ、しばらくここにいてルックの看病しても
いい?」
(風邪が治ったら絶対一番に襲ってやる!)
ケイの笑い声を聞きながら、ルックは固く復讐を誓うのだった。




妄想日時:’03.9.6
妄想場所:HEYルック寿司(仮名←元ネタわかったかな)

寿司屋にて。最初はルックが寿司屋だったら…とか、
そんな他愛も無い話題だったのだが、 いつのまにかこんな話に発展。
何ゆえ?!