花帰葬
         
08.3.3        
 シアワセの呪文

執務室に足を踏み入れた銀朱は目を点にして固まってしまった。
いつもは大きな窓から差し込む太陽の光りで明るい執務室。
なのに銀朱の目の前は真っ暗だ。
いや、真っ暗と言うより真っ黒い壁。
恐る恐る視線をその黒い壁の下から上へ流し見る。

「………」
目が合った。

「き…ききききき…貴様…!!!!!!!な…何故いるーっ!!!!!!」
叫ばずにはいられなかった。
銀朱の目の前にはいるはずのない…いられると困る相手がいた。
しかし、その相手は銀朱の叫びにも動じることもなく、表情の一つも変えない。
「元気か?」
「人の質問に答えろっ!!何故貴様がここにいる!?玄冬よ!!!!!」
銀朱はビシッと指をさし、真っ直ぐに見据えた。
「俺は…玄冬ではない…」
「はぁ?」
「…と言うことにしておかなければマズイだろう?色々」
表情一つ変えずにただ真面目に淡々と語る玄冬に、銀朱は閉口してしまった。
「確かにそうなのだが、そういうことを聞いているのではない、馬鹿者!!!!!!」と言うツッコミも
石化してしまっている銀朱には口に出すことすら出来ない。
「今日はあんたに届けものをしにきた」
その玄冬の言葉で石化が解ける。
「届けもの?」
銀朱が不思議そうな顔をすると、黒い壁の向こうから桜色のものが見えた。
「………あ…」
「やぁ。相変わらず元気そうじゃん、銀朱」
「花白………!!!!」
壁の向こうから現れたのは銀朱がよく見知っている人物。
かつて救世主としてこの彩の城に住んでいたが、救世主としての使命がなくなり、何処へと消えた事になっていた。
花白が城を出て、会わなくなって約一年の歳月が経っていた。
「ハッキリ言って僕は嫌だったんだよ…面倒だし。でも…玄冬がどうしてもって言うから…」
「な…ぜ…?」
「何故?何だ、あんたそんな事も知らないのか?」
「………?」
さも当然と言うように話す玄冬とは対照的に、銀朱はその意味がわからずにいた。

「今日はあんたの誕生日なんだろ?だからあんたが喜ぶ者を連れてきただけだ」
「あ………」
「はぁ…やっぱりね。こんな事だろうと思った。だから嫌だったんだよ」
「花白…お前が言ったんだぞ?今日は隊長の誕生日だって」
「ちょ…!」
お役目熱心、仕事第一な銀朱は誕生日を忘れるなんていつもの事だった。
花白は照れ臭さを隠す為に不機嫌を装う。

「お前達……すまない、ありがとうと言うべきだな」
銀朱も照れ臭そうに頭を下げる。
「誕生日のプレゼント…にはならないかもしれないが、喜んで貰えて何よりだ。さあ、花白。お前も拗ねてないでおめでとうくらい言えよ?」
「う〜…わかったよ…銀朱…」
大きく深呼吸をして、また大きく息を吸ってから言う。



「HAPPY BIRTHDAY」




K家妹
妄想日時:’08.3.1
妄想場所:K家姉の私邸

「隊長の誕生日SSよろしく」と言われたのが3/1の午後。
「いつアプ?」「明日の深夜」アンタどこの鬼ですか!?(笑)
運よくネタの神様が降りて来てくれてノリノリで書いていて、「完成!」と思った瞬間
「隊長に馬鹿者って言わせるの忘れた!」 あくまで1隊長1「馬鹿者」を貫こうとする私。
出だしはギャグなのにいい話になってしまったのは予想外でした(笑)