|
花帰葬 |
| 08.10.26 |
| the rest of the story |
「希沙の誕生日、秋なの………それまでに雪、止むかなぁ」 朝 眼を覚ました希沙は、カーテンを開けて窓の外を見た。 懐かしい夢を見たせいか、雪が降っている事を期待して。 だが、当然ながら雪ではなく、外では黄や赤に色を変えた木の葉が降っている。 あれから………雪は止み、春が来て夏が過ぎ、秋になっていた。 二度と訪れないと思っていた誕生日がやってきた。 そう、季節は巡った 希沙はそっと窓に触れた。 窓に映っているのは確かに自分のはずなのに、そこに誰かの面影を見ていた。 二人のお兄ちゃんの事を 大きなおにいちゃんは、希沙よりずっと大きいのに、何故か危なっかしくて放って置けなかった。 話をすると、とっても面白くて、そしてすごく優しかった。 一緒にいた時間はとても短かったけど、それでも希沙はそのお兄ちゃんのことを大好きになっていた。 小さいお兄ちゃんは、今思い出すとまるで子連れの野良猫みたいだったように思う。 ただでさえ警戒心が強いのに、子供を守るためなら自分よりもずっと大きな人間にだって爪を立てる、そんな感じだった。 そして、小さいお兄ちゃんがそうまでして守りたかったのは、きっと大きなお兄ちゃんだった。 二人のお兄ちゃんとの別れは、とても悲しい記憶。 あの時の希沙は、ピタリと喉元に触れた刃の恐ろしさに震えるしかなかった。 多分、小さいお兄ちゃんは本当に希沙を殺そうとしていた。 でも、本当に震えていたのは希沙だけだった? 「すまない」 苦しそうな声が聴こえたような気がして希沙は顔を上げた。 もちろんそこに誰かがいるはずがない。 だけど、それはいつか聴いた声。 そう、小さいお兄ちゃんの腕から逃げ出して、お父さんに抱きしめられた時に聴いた声。 希沙は混乱とショックに、ほんの些細な事にも怯えた。 その声に、その顔に、その眼に、多分大きいお兄ちゃんは希沙よりも傷ついた表情(かお)をしていた。 小さい頃から聴かされていた、とてもとても怖いもの。 人が人を殺しすぎた時に現れて、雪で世界を終わらせるもの。 ―――玄冬――― 大きいお兄ちゃんはそう名乗った。 『玄冬』がいると雪は止まない。 いつか世界は白い眠りにつく。 今は? 今、窓の外には雪はない。 じゃあ大きいお兄ちゃんは? 『玄冬』が現れると、『玄冬』を倒すための『救世主』様が現れるという。 『救世主』様は『玄冬』を倒し、導きの『白の預言師』様と姿を消したと、お父さんが話していた。 「お兄ちゃん………」 誰かに届くはずもないのを知っていて、それでも希沙は声に出して呟いた。 ごめんなさいと言いたかった。 あんな顔をさせてごめんなさい、傷つけてごめんなさい、と。 確かに『玄冬』は怖い、けれども『くろとお兄ちゃん』の事が大好きだったのは本当だから。 でも、どんなに世界中を探しても、どんなに大きな声で謝っても、きっともうお兄ちゃんには届かない。 あの小さいお兄ちゃんはどうしたのだろう。 多分『玄冬』と知って、なお大きいお兄ちゃんを守ろうとした小さいお兄ちゃんは………。 希沙は二人を想って、コツリと冷たい窓に額を預けた。 着替えて階段を下りるとノックの音が聴こえてきた。 今、玄関に一番近いのはきっと自分だ。 「はーい!」 と声を掛けて玄関の扉を開く。 そこには誰の姿もなかった。 ただ、小さな箱と包みを見つけた以外は。 「旅するウサギさんとクマさんが希沙の誕生日と好きなもの覚えていてくれたの…!」 怪訝そうに希沙に訊ねた父に、希沙はそう満面の笑みで返した。 本当は今すぐにでも外に飛び出して捜したかった。 見つけて、何を言おう。 謝る?ううん、 「ありがとう…お兄ちゃんたち」 希沙は呟いた。 希沙の誕生日を覚えててくれた事が嬉しかった。 希沙の誕生日を祝ってくれた事が嬉しかった。 何よりも、希沙が今、生きている事を喜んでくれた事が嬉しかった。 そこにお兄ちゃん達がいなくても、その気持ちは充分に伝わったから。 だから、希沙は捜さなかった。 きっとそれをお兄ちゃん達は望まないと思ったら。 玄関の扉を閉めた。 けれど、希沙は名残惜しそうにその扉をいつまでも見つめていた。 今は逢えなくても……… 「きっとまた、逢えるよね」 希沙は眼を閉じて微笑んだ。 その時にはいっぱい謝って、そしてあの時出来なかった事をしよう。 朝ごはんを食べて、いっぱいいっぱい旅のお話を聞かせてもらおう。 だってお兄ちゃん達はこの世界のどこかにいるのだから――― |
K家姉 妄想日時:’08.10.21 妄想場所:私邸 K家妹に「卑怯だーーーーーっっっ!!!!!」と言われるのを覚悟で 勝手に合作(笑) アプするまで、相方にもひた隠しに隠しまくってました…テヘ☆ まずはK家妹のSSから読みましょうってことで。 希沙のBDが私にとって一番のラスボスでした…来年こそは…(ぇ?) |