花帰葬
         
08.3.25      
 Birthday Night

はなしろは不機嫌だった。

今日は誕生日。
彼は一つだけ年を取る。
ほんの一月だけだけど、大好きなくろととの距離が縮まるのは嬉しかったが―――

パーティが終わり、招待されていたくろとと一緒に、はなしろは寝台に寝転がっていた。
もともと大きすぎるほどだった豪奢なベッドは、子供が二人並んで寝ても、一向に狭さを感じさせない。
柔らかな枕に頬杖をついて、はなしろは足をバタバタさせていた。
その脇でくろとは身を起こし、普段は読めないような城の蔵書を、ここぞとばかりに読んでいる。
普段なら本に熱中するくろとに「つまんなーい」「遊んでー、くろとー」と駄々を捏ねるはなしろであったが、 今日は唇を尖らしながら、そんなくろとを黙って眺めていた。

ぱたんと本を閉じて、満足気にくろとは息を吐いた。
「面白かった?」
「ああ、なかなか興味深い内容だった」
それから、サイドテーブルに本を置くと、もそもそと布団にもぐりこむ。
「そういえば…」
近付いたはなしろの顔を覗きこみながら、くろとは言った。
「お前、今日は大人しいな」
「うん、だってね、僕、一つお兄さんになったんだもん」
そう言いながら、くろとに抱きついて頬を摺り寄せる。
その子供らしい仕草に、小さく笑みを浮かべてくろとは言った。
「そうだな」
「でも…」
不意にはなしろの声のトーンが落ちて、くろとは眉をひそめた。
「でも、くろとと同じが良かったな。くろとと同じ年だったら、きっとくろとよりおっきくて、くろとをもっと守れるのに」
「はなしろ…」
有り得ない「もしも」を口にするはなしろにくろとは戸惑った。
そもそも、例え同い年だったとしても、俺より大きくなるのは周りを見れば無理だと思うぞ、と口には出さずにツッコむ。
代わりに抱きしめるように、はなしろの頭を抱え込んだ。
くろとの腕の中、はなしろは淋しげに見上げてくる。
そのはなしろに、一言一言丁寧に、想いが伝わるようくろとは言った。
「お前はもう、充分俺を助けてくれてるだろう」
この世でたった一人、自分を傷つけられる者。
そんな彼が、自分には決して刃を向ける事は無いのを知っている。
それに、彼以上に自分の心をこんなにも動かす者は無く、彼以上に自分の心を傷つける者はいない。
だが彼は傷つけるどころか、いつもその無邪気な笑顔と、天真爛漫な行動で、自分を癒してくれる。
同時にそれは自分には決して無い物だったから、少し羨ましくもあったが。
この世でたった一人、自分を守れる者。
くろとは身体(からだ)も…心も傷つけられる事は無い。
むしろ何も出来ない歯がゆさは、くろとの方にこそあった。
だから…
「それに、お前勉強嫌いだろう」
「え?」
目をパチクリして、はなしろは聞き返す。
全く、そういう所だけ他の奴等に似るんだなとぼやいて、くろとは言葉を続けた。
「だから、俺が少し年上なら、その分いっぱい勉強して、お前に色んな事教えてやれるだろう」
何もかもが同じじゃないから、一緒に居られるんだと言う事を伝えたかった。
パズルのように、凸と凹を組み合わせて、一つの形になるように、お互いの足りないものを補い合いながら。
「ホント?ホントに何でも教えてくれる?」
「ああ、俺にわかることならな」
「じゃあ、じゃあ」
はなしろはくろとの寝着を掴んで覗き込む様に見上げた。
「くろとは僕の事好き?」
「は…はなしろ?」
「だって、わかる事なら何でも教えてくれるんでしょ?」
ねぇねぇとねだるはなしろに、くろとは溜息を一つ吐いて答える。
「ああ、好きだぞ」
「ホント?じゃあ…」
ベッドの中で体をずらして、近かったはなしろの顔が更に近付く。
そして、啄ばむ様にくろとの唇に口付けた。
「こういうの、好き?」
くろとは口篭った…突然奪われたキスに、思考が真っ白になる。
代わりに顔がみるみる赤くなっていった。
「ねぇ、くろと」
「う…」
逃げる事を許さない、真っ直ぐに自分を見つめる無垢な瞳。
誤魔化すことも出来ず、くろとは言葉を搾り出した。
「嫌い…じゃない」
だがまだ早いと言っているだろう、と言うくろとの言葉を聴かず、まるでお気に入りに玩具を手放し たがらない子供みたいに貪欲に、更にはなしろは口付けた。
執拗に唇を求められて、息が上手く出来なくて、僅かに唇の離れた瞬間に薄く唇を開いて酸素を求めれば、そこからはなしろの舌が 進入してきて、自分の舌を絡め取られる。

どこでこんなの覚えてくるんだ。

困惑と、もしかして他の誰かとしてるんじゃという自らの想像に嫉妬心を覚えながら、 くろとははなしろのキスに翻弄されていく。
ようやくはなしろの唇が離れると、はぁ、とくろとは安堵の息を漏らした。
それがどれほど甘いものに変わっているか、無自覚なままに。
そんなくろとに満足気に笑みを浮かべると、花白は言う。
「ねぇ、ねぇ、気持ち良かった?」
「はなしろ…」
「何でも教えてくれるんでしょ」
ああ、自分は弱い…と思う。
いつだってはなしろの笑顔には敵わないのだから。
「ねぇ、くろと」
「その…気持ち、良かった」
笑顔に促されるように、そうくろとは答えていた。
鏡なんか無くても今、自分がどんな顔をしているのか、くろとにははっきりわかる。
きっと、もの凄く真っ赤だ。
その証拠に、有り得ないほど顔が熱い。
じゃあ、じゃあ!と嬉しそうに言いながら、寝着のボタンを外し始める。
ぎょっとして、はなしろの腕を掴んで止めると、はなしろは不満そうにくろとを見上げた。
「くろと?」
「だ…だから、これ以上は駄目だ」
「なんで?」
「まだ俺達には早い」
「どうして?」
きょとんと自分をみるはなしろに、どう説明したらわかってもらえるか、くろとが必死に思考を巡らせると、 はなしろの手が、キスだけで僅かに持ち上がったくろとの敏感な部分に触れて、思考を中断させられる。
跳ねる様に肢体(からだ)が震えた。
「は…はなしろっ?!」
「ねぇ、くろと…」
目を細めて、はなしろは笑みを浮かべている。
子供とは思えないその淫靡な笑みに、くろとはぞくりと身を震わせる。
「どうしてくろとのココはこんな風になっているの?」
服の上から擦られ、その刺激だけで更にそこが上向いた。
「何でも教えてくれるんでしょ?」
「や…めろ、はなしろ…」
「どうして止めなきゃいけないの?これ以上したらくろとどうなっちゃうの?」
教えてよ…と耳元に囁かれて、くろとは観念した。
きっとはなしろは満足するまで、行為を止めることは無いだろう。
この子供だけの王国(へや)で、箍の外れた子供の欲望は留まる事を知らない。

あれほどこういう事はお酒が呑める年になってからって言っているのに。

眉間に寄せられた皺は、はなしろを止めきれなかった自分への苦悩か、それとも与えられる強すぎるほどの刺激に耐えている為か………。
抵抗を諦め、自分に身を委ねたくろとに、はなしろは嬉しそうに笑みを浮かべる。


「約束だよ、全部教えてね。くろと」




K家姉
妄想日時:’08.3.22
妄想場所:自室

ピコン♪
こはなは言葉攻めのスキルをマスターした

何故…年長の救銀はCPにすらならなかったのに、幼くなってくにしたがって工口…orz
しかも、Wordで2Pくらいのさっくり読める物を…と思ったのに、何故4Pに…。
とにかく、ギリギリ裏を作らなくてもいいように頑張ってみました
…ていうか、 話が脱線したまま終ったのが心残り…(苦笑)。

(大)とこはなは明確な誕生日が設定されていないので、花白と一緒にお祝いしてみました。