花帰葬
         
08.4.26      
 STEP you

「玄冬〜〜〜〜っ!!」
バターンと盛大にドアを開け、花白は山小屋へ飛び込んだ。
驚くというよりは呆れた風に、玄冬はそんな花白を出迎える。
花白が来たことくらい、気配でお見通しだ。
「何だ、騒々しいな」
「ゴメン、ゴメン、つい気が逸(はや)っちゃってさ」
息を切らしながら玄冬の前で立ち止まると、花白は背後に隠すように持っていた包みを玄冬に差し出す。
「はいっ」
「はい…って…」
「やだなぁ、今日は君の誕生日でしょう。だからプレゼント」
ずいっと包みを前に出すと、反射的に玄冬はその包みを受け取った。
綺麗な包装をされた大き目の箱は、持ってみるとさほど重くはない。
「あ、ああ、そうだが…お前に話した事があったか?」
「ちょっと癪だったけどバカトリに聞いた。ね、開けてみてよ」
「ああ」
花白の笑顔に促されて、玄冬は丁寧に包装紙を開けてゆく。
そして蓋を持ち上げ、中身を見ると―――

「………」

「ど…かな…?」
マジマジと箱の中身を凝視する玄冬の反応を窺うように花白は覗き込む。
「どうって………」
困惑したように玄冬は花白を見返した。
「気に入らない?」
「気に入らないとか以前に、なんで今頃冬物なんだ?」
箱の中には既に春を迎えたこの時期に似つかわしくない、真冬向けの服が収まっていた。
「大変だったんだよ、この時期に冬の服探すの」
「それはそうだろうな」
春も盛りを過ぎ、これから夏を迎えようというこの時期だ。
あと数日もすれば今着ている服すら暑くて、薄手の物に変わるだろう。
当然服飾関係は季節を先取りして、既に夏の物が並び始めている。
冬服など売れ残りのバーゲン品位しか店先に出されていないはずだが、箱の中の服はとてもそんな売れ残り品には見えない。
きちんと仕立てられた上質のものだった。
なるほど、これほどのものは今の時期に手に入れるのは困難だったろう。
だからこそ、玄冬には不思議だった。
なぜ花白がそこまでして、玄冬に冬服を贈るのかが。
それを察した花白は、家に飛び込んで来た時の勢いはどこへやら、言い難そうに視線を逸らした。
「うん…とね。実はちょっとしたおまじないのつもりだったんだ」
「おまじない?」
「うん」
首筋に手を当て、照れたように花白は笑う。
「次の冬にそれを着た玄冬を見たいなって。次の冬も…これからもずっと、一緒にいられるようにって」
「花白…」
「システムが無くなった以上、僕らは今の生が終った後もまた生まれてもう一度出逢うって事は保障されなくなったから …だから、今生きているうちはずっと玄冬と一緒にいられたらって思ったら、つい、こういう選択になってしまったというか…」
珍しく歯切れの悪い口調になっていく花白の頭に玄冬がぽんと手を乗せると、花白は上目遣いで玄冬を見上げる。
「玄冬?」
「ありがとう、花白」
深い蒼の瞳が優しく細められ、唇が柔らかく笑みを浮かべる。
その玄冬の表情(かお)が、花白にとっては充分なお返しだった。
つられる様に花白の顔にも笑みが浮かぶ。
「ね、玄冬、着てみて?」
「ああ…」
軽く羽織るつもりで、玄冬は自分の上着に手を掛ける。
その手に花白はそっと自分の手を重ねた。
「花白?」
「ね、玄冬。知ってる?」
「何がだ?」
「好きな人に服を贈るってゆーのはね、その服を脱がせたいってゆー意味なんだよ」
身長差があるせいで、花白が俯くと前髪が陰になってその表情を読み取ることが出来ない。
だが、唇が笑みを型取っていたのを、確かに玄冬は見た。
「お前…もしかして…」
玄冬の背に冷たい汗が伝う。
「僕が脱がせてあげるね、玄冬」
「ま、待て…!こんな所でか!誰かが来たらどうする!!…じゃなくて、本当はそれが目的のプレゼントじゃないのか?!お前!!」
「やだなぁ、さっき言ったことは本当だよ」
悪びれることも無く、にっこりと花白は玄冬に笑いかける。
「むしろこれはプレゼント第2弾ってトコかな。僕、玄冬が気持ち良くなるために頑張るから」
「…そういう事を言うな!そもそも、贈った服を脱がせたいという意思表示なら、着替えの段階でこういう事をするのはどうなんだ?」
「サービス?」
「どっちがだ」
「もちろん玄冬にだよ」
そう言って、ぐいっと頭を引き寄せて身長差を縮めると、花白は玄冬に口付けた。
執拗に唇を貪り、口膣を蹂躙し、舌を絡める。
抵抗する力を奪うようにキスを深くすると、玄冬がしがみ付いてくる。
自らに掛かる玄冬の重みを感じて、花白は唇を離して至近距離で玄冬の瞳を覗き込んだ。
「ね、玄冬。ここがダメなら玄冬の部屋へ行こ。なんなら僕がお姫様抱っこで連れて行ってあげようか」
からかう様にそう囁くと、既に涙で潤んだ瞳で玄冬は花白を睨みつける。
「馬鹿、一人で歩ける」
「え〜残念」
割と本気でそう言うと、ますます玄冬の視線が厳しくなる。
宥める様に軽く口付けて、花白は囁いた。

「誕生日おめでとう、玄冬」




K家姉
妄想日時:’08.4.25
妄想場所:私邸

祝ってない!祝ってないよ!俺!!
(大)の時といい、何故素直に誕生日を祝えないんだ、私!!


むしろ花白さん一人勝ち(苦笑)