花帰葬
         
08.4.26      
 present for you〜黒鷹編〜

いつもと変わらない平穏な今日。
しかし、ある者達にとっては特別な日━━━

「ノン!何をやっているんだ、キミは!」
いつもと同じように台所に立つ玄冬を見つけ、黒鷹が声を上げた。
「何って…晩飯の準備だが…見てわからんのか?」
「それは見ればわかるがね…」
「何だ飯はいらないのか」
「ノンっ!そうじゃない。今日は玄冬、キミの誕生日ではないか! 誕生日と言えば年に一度の特別な日。その特別な日に主役のキミが台所に立つなんて…」
「何だ…お前が飯を作ってくれるのか」
「ノーーンっっっ」
黒鷹の叫びが木霊した。


「飯を外に食いに行きたいならもっと早くそう言え」
「しくしく…」
そんな訳で黒鷹は玄冬を連れて里へご飯を食べに連れ出した。
「こんな風にお前と二人で飯を食いにくるのは久しぶりだな」
「そうだろう!?キミが小さい頃にはよく来ていたが…。まぁ今日はキミも呑み給えよ」
黒鷹は上機嫌で酒を口にする。
「お前はいつもそうやって肉と酒しか口にしなかったな。俺には何でも食えと言いながら」
「だが私の言うとおりにしたら大きくなったじゃないか。…大きくなり過ぎて些か可愛げに欠けるが」
「………」
玄冬の誕生日が嬉しかったのか黒鷹の呑むペースは早かった。


それから少し時間が経った頃には黒鷹は完全に出来上がっていた。
「おい、黒鷹…飲み過ぎじゃないか?」
「だーいじょーぶ、だーいじょーぶ」
そう言ってヘラヘラと笑った。
「もう帰るぞ」
黒鷹の腕を掴んで席を立とうとした時だった。
「なぁ、玄冬」
いきなり真剣な声で呼び止められた。
「何だ?」
「キミは…自分の親の事を知りたいかい?…会いたいと…思うかい?」
「黒鷹…」
「実は私は誕生日プレゼントを何も用意出来なくてね…」
黒鷹は酒をグイッと呑んだ。
「もし…キミが望むなら…」
「何を言っている」
「くろ…と…」
「そんなの…今更じゃないか…」
「………」
黒鷹はグラスに映った自分と玄冬の姿を見ていた。
「俺の親はお前だろう。何を言ってるんだ。…飲み過ぎだぞ」
「玄冬…キミは…」
「子ども嫌いなお前が俺をここまで育ててくれた。今もこうして一緒に飯を食ってくれている。お前にこれ以上何かを貰おうとは思ってはいない…」
「玄冬…」
黒鷹は目頭が熱くなるのを感じた。
「それでは気が済まないと言うのなら…これからは毎日野菜を食うと誓って貰おうか」
「すまないがそれは遠慮させて貰おう」
黒鷹はグラスに残った酒を一気に飲み干した。




K家妹
妄想日時:’08.4.26
妄想場所:自室

黒鷹「だから私は子どもがキライなんだ…。 すぐにこんなに大きくなって…いくら大事に育ててもいつか巣立っていってしまうんだからね…」
というセリフは涙を飲んでボツにしました。
だってもう十分いい話じゃないか…ウルウル
鷹の存在はズルいと思う