花帰葬
         
08.6.12      
 素直なキモチ

話は花白が玄冬に出会う前まで遡る。


「おや?」
黒鷹が偵察から帰って来ると、家の中には見慣れぬ来客がいた。
「あ…!こんにちは。お邪魔しています!」
黒鷹に気がつくと少し驚いてから笑顔で挨拶をする。
こんな山奥の小屋に来客自体珍しいが、何より黒鷹が驚いたのは、その来客が小さな少女だったと言うことだ。
「はい、こんにちは」
黒鷹はそう挨拶をすると玄冬の方へ歩み寄り、小さな声で言った。
「キミにこんな可愛いガールフレンドがいるなんて知らなかったぞ?…しかしキミの趣味がこんな子だったとは…」
「何を勘違いしている。別にそんなんじゃない」
「またまた…隠さなくたっていいじゃないか!」
「だからそんなんじゃ…」
少女は暫く二人のやり取りを不思議そうに見た後、黒鷹に話し掛けた。
「あの…おじ様、私は鈴音って言います!山で迷子になって玄冬に貰ったり、いっぱい親切にしてもらいました!」
「そうだったのかい。あぁ!私としたことが名乗るのが遅れてしまったね。私は…」
「黒鷹さんでしょ?玄冬のお父さん!」
「まぁ…そんな感じかな。しかしキミはよく知ってるね」
黒鷹にそう言われると、鈴音は嬉しそうに答えた。
「玄冬にいっぱい聞いたから…。だから一目でわかりました」
一体どんな風に話したんだろう…と疑問に思いながらも「そうかい」と話した。
「鈴音は山を下りた村の娘で、買い出しに行った時にも稀に会うんだ」
「玄冬はこんなに優しくていい人なのに、あのお伽話の"玄冬"とおんなじ名前ってだけで村のみんなは…」
「だから村で俺を見ても話しかけるな、と…」
「どうして!?玄冬はいい人よ?みんな誤解しているだけだもん。いつかわかってくれるもん!」
目に涙を溜めて切に訴える鈴音を見て、黒鷹は察した。鈴音が玄冬に対して少なからず好意を持っていると言うことを。
それを親として嬉しくも思う反面、黒の鳥としては複雑な感じがした。
玄冬と言う名前を聞いても慕ってくれる鈴音。この感情がいつか彼女を不幸にしなければいいが…そう思った。
「それでお嬢さんはここに来ることを誰かに話してきたのかい?」
「それは…」
「鈴音!?」
鈴音は俯き、落ち込んだ様子を見せた。
「だって…今日、私…誕生日だから…」
「だからって…!」
「まぁまぁ」
鈴音を問い詰めようとする玄冬を黒鷹が制止した。
「玄冬、この子は誕生日にキミに会いに来た。それは光栄な事だぞ?そんな彼女に帰れと言うのは酷過ぎる」
「しかし…」
「ストーップ!いいじゃないか、今日くらい」
「…仕方ない」
「いいの?」
「あぁ。今何か作ってやる。少し待ってろ」
「ありがとう!」
玄冬の言葉に鈴音は再び満面の笑みを浮かべる。
「玄冬の料理は美味いぞ〜?…だが、食べたらちゃんと家に帰りなさい。いいね?」
「はい!」
鈴音は首を縦に振って返事をした。
押し掛けて来てしまい叱られたことも、家に帰ったら怒られるであろうことも全て鈴音の頭の中から消えていた。
それ程までに鈴音の心は幸せな気持ちで満たされていた。
その後に起こる悲劇も、まだ誰も知らない。




玄冬がいるから世界は悲しむのよ…
でも…玄冬がいたから私は幸せだった…




K家妹
妄想日時:’08.5.31
妄想場所:自室

祝ってねぇ(笑)
全然祝えてねぇ!
実はこれ本当はギャグになる予定だったんですけど、長くなったのでボツにしました(笑)
鈴音…誕生日企画のラスボスかもしれません(笑)