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花帰葬 |
| 08.5.12 |
| Dreamin’ Dreamer |
一つ年を取る ねぇ、玄冬 私はあなたの理想の女の子に近付いているかしら 「ねえ、私の事、玄冬のお嫁さんにしてくれる?」 そう言うと、遊びに来た私の相手をするために、テーブルの向かいに座ってお茶を飲んでいた玄冬が盛大に咳き込む。 噴き出さなかったのが不思議なくらい。 気管に入ったのか、苦しげに咳をする玄冬があんまり苦しそうだから、思わず席を立って、玄冬の背後に回りこみ、その大きな背中をさすってあげた。 やがて咳が治まると、涙目になりながら、玄冬が私を見る。 あ、困っている。 「あのな、鈴音…」 「あ、もちろん今すぐじゃなくていいのっ!私がもうちょっと大きくなったら」 玄冬の言葉を急いで遮る。 「………もうちょっと大きくなって、玄冬の理想の女の子になれたら…玄冬のお嫁さんにして欲しいなって…」 否定の言葉を聞きたくなくて、私は答えを先送りにした。 そして、玄冬がどんな表情(かお)をしているのか怖かったから、俯いて、ただ両手でぎゅっと自分のスカートを握り締める。 多分私は哀れな顔をしているだろう。卑怯にも、同情を誘うように。 それでも、やめる事は出来なかった。 本当に玄冬が好きで好きで…大好きだから、玄冬の気が惹けるなら何でもする。 「だから教えて、玄冬の理想の女の子」 必死に玄冬を見ると、私が泣き出さなくてほっとしたのか、代わりに玄冬は溜息を一つついた。 「理想の…って、特に考えたことも無いな。健康であればいいとか、好き嫌いをしないとか…」 「だったら大丈夫。私、健康には自信あるし、好き嫌いだって…」 「確かにお前は黒鷹ほど好き嫌いはない…が、この間、貝を残していただろう…こっそりと、さりげなく」 「う…。気付いてたのね、玄冬」 先日ご馳走になった昼食のパスタの中に、私の嫌いな貝類が入っていて、あのグロテスクな食べ物をこっそり避けておいた。 そして…やっぱりそれを見逃す玄冬じゃ無かった。 見抜かれて気まずそうに視線を泳がす。 ちらりと玄冬を見ると、玄冬の目の色が変わったのがわかった。 蒼い瞳が生き生きと光を放ち、総てを見透かすように、私を見る。 普段の私なら玄冬に見つめられれば、顔から火が出そうなほど熱くなって、夢見心地になるというのに、何故かぞっと背筋が凍りついて 体温が一気に下がったような錯覚を覚えた。 こんな時だけ何故か玄冬は、まるで『玄冬』のように思えて……… 雪で世界を閉ざす魔王――― 名前が同じだからって、普段の玄冬を知っていれば、それとはまったく別のものだってわかるけど。 なぜか食べ物の好き嫌いが絡むと、ちょっと人が変わって、まるでそんな物語の怖いものみたいになる。 おじ様といるとよく好き嫌いで喧嘩して、そして普段とその時のギャップが面白くて、ますます玄冬が好きになったりするけれど…自分がその立場になると、結構怖いものなのね。 ごめんなさい、おじ様。 真剣におじ様の好き嫌いを何とかしようとしている時の玄冬もかっこいい…なんて思っていて。 これは本当に怖いかも…。 「鈴音…貝の栄養価について聞きたいか…?」 「だ…だって、貝って気持ち悪い形してるし、たまにジャリジャリするし、美味しくないもの…」 「鈴音………」 ずいっと、玄冬が近付く。 思わず一歩後ずさる。 「貝はな………」 返事もしていないのに、玄冬は貝について語りだす。 その度に近付いてくる。 私は逃げる。 まるで春の森の中で、餓えた熊に出会った時のように、視線だけは玄冬に固定し、ただゆっくりと距離を取ろうと後ずさる。 やがて壁際に追い詰められた。 普段は頼もしく感じる玄冬の大きな体が、威圧的に迫ってきて、獲って食われる…っていうより、獲って食わされるという恐怖の中、私はただ叫んだ。 「私…私…貝だけはイヤーーーーーーーっっっ!!!!!!!!」 すっかり話を逸らされた事に気づいたのは、村への帰り道をふらふらと歩いている時だった。 これが策略なら、意外とやるわね…玄冬。 まずは…貝をなんとかしないと。 貝を克服した暁には、絶対お嫁さんにしてもらうんだからーーーーー!! 今はまだ、考えるだけで吐き気がするけど。 待っててね。 私、絶対大きくなるから。 玄冬のお嫁さんになれるように頑張るから。 だから玄冬 ずっと傍にいてね――― |
K家姉 妄想日時:’08.5.9 妄想場所:私邸 うん…もう… 言い訳する事もありません 「誕生日関係無ぇ!!」 |