花帰葬
花白×銀朱        
08.11.29       
 ビロードの闇

(何もしないんじゃない、何も出来ないんだな…君たちは)
「………くそっ!」


黒鷹に言われた言葉がふと脳裏を過り、銀朱は思い切り頭を横に振った。
だからと言ってその言葉が消える訳でもなく、振り切れない想いが胸を突く。
「…自分に出来る事をしろ………か…」
はぁ。と溜息を吐くと同時にコンコンと執務室のドアを叩く音が聴こえ、銀朱は思考の世界から現実に引き戻された。
「…入れ」
「失礼します」
平素ならお役目大事の銀朱だが、あれ以来仕事に身が入らない。
救世主が「玄冬」を倒し、世界の崩壊は回避されたというのに、山積みされた書類を眺めてみてもどこか虚しささえ覚えていた。
(アレがあんな状況だと言うのに…こんな仕事に何の意味があるというんだ…)
「………あの…銀朱隊長?」
「あぁ、すまない。何でもない。それで?」
「あ…はい、実は…花白様の事なんですが…」
「…!?花白がどうしたっ!?」
『花白』と言われて思わず立ち上がった。
(まさか…花白の身に何か……)
「花白様が…今日も食事を摂って下さらないのです…これでもう何日目になるのか。……隊長の方から何か仰って頂ければと…」
「わかった」
そう言って銀朱はやり掛けの仕事も放置して、執務室を出て行った。

「………」
だが、いざ花白の部屋の前まで来てもそのドアを叩く事が躊躇われた。
(もう僕の事なんか放っておいてよ!!)
意地っ張りで気の強い花白がそう叫んで泣いた事が思い出された。
それまで「救世主」としての理想を押し付けるだけで、花白の気持ちを考えることなんかなかった。
しかし、救世主としての使命を全うした今、日に日にやつれていく花白を見て、彼は甘えたい時期に甘えを許されなかった子供だった事に気付いた。
(………できるさ…俺にだって……)
そう自分に言い聞かせ、そのドアを叩いた。
「おい、花白」
「………」
「……お前、今日も飯を食わなかったそうだな」
「………」
「少しでもいいから飯を食え。でなければ元気になんかなれんぞ」
「いいよ、別に」
「………元気になってあいつの好きだったものを見に行くんじゃなかったのか?」
銀朱なりの精一杯の後押しだった。
「………何…ソレ」
「…花白…?」
「行くなって言ってみたり、行けって言ってみたり、どっちだよ」
「………」
「自分勝手過ぎるよ、みんな。僕が死のうが生きようがお前達には関係ないだろう!?僕はもう使命を果たしたんだ…もう放って置けよ!!」
「花白……!」
「………玄冬が居たら…玄冬が作ったご飯なら…僕は食べるよ…。玄冬がいたら僕は生きていけるよ。でも…玄冬が居ないのに…こんな世界…意味がないのに…なんで…使命果たしたのに…僕は自由になれないの……」
押し込まれそうな程の深い絶望の気持ち。
思わず銀朱も気圧されて、言葉を失った。
(やっぱり何も出来ないんじゃないか。何もしようとしなければ、何も変わらんぞ)
一瞬黒鷹の言葉が聞こえてきた気がした。
(何か…玄冬の代わりに花白に生きる希望を持たせる方法はないものか)
「お前は一人じゃない。…白梟殿も…俺もいる」
「………え?」
(心配させるな、じゃない。心配させろって素直に言い給え)
「お前に居なくなられると困る。お前に元気になって貰いたいんだ、俺は…」
素直に正直に言ったつもりだった。
「………ははっ」
「……はなしろ…?」
「何だよ、お前…まさか自分が玄冬の変わりになるとでも…本気で思ってるわけ?」
ベッドから立ち上がり、笑いながら銀朱を見据えた。
「はな……っ」
銀朱の前まで歩いてくると、その胸倉を掴み、ぐいっと引き寄せた。
「馬鹿じゃないの?お前如きが玄冬の変わりになるわけないだろう?」
「………っ」
「僕がこんな体になったから油断した?…悪いね、こんなやつれた体でもまだお前程度に負けるわけないんだ」
「………やめろ…花白…俺は…」
怯えたような目を向ける銀朱を見下して楽しそうに笑う。
「…いいよ、わかった」
「………!?」
「玄冬の代わりになりたいって言うなら…なってもらおうじゃない…」
「………っ…んっ………!」
銀朱の頭をぐいっと抑えて花白はその唇を奪った。
「玄冬の代わりになるかどうか…試してあげる。…せいぜい頑張って尽くしてよね、タイチョー」
「…や…やめ………」
「お前の事が少しでも好きになれたら…」
そして、花白は力任せに銀朱の自由を奪って言った。


「玄冬…僕は…本当に君の事が好きだったんだ…」

「君が居れば他に望むことは何もないのに…」


「何だよ…もうオシマイ?」
ベッドの上で動かない銀朱を見下してつまらなそうに呟いた。
「悪いね、何も感じられなかったよ。お前なんかじゃ」
「………」
「まだ…足りない…こんなんじゃ…僕の闇は………消えない」
そして花白は愛する者を消し去った自分の手を見つめて涙を落とした。
それからゆっくりと銀朱の方を向いて言う。
「だから…もっと…もっともっと…お前にもあげるよ…僕が味わった苦痛と同じ位の苦しみと…絶望を…。まだ…自由になんかしてやらない。簡単に殺してもあげない…。もっと苦しんでよね…ねぇ…隊長………」




K家妹
妄想日時:’08.10.12
妄想場所:K家姉の私室

コワレル程アイシテモ3分の1も伝わってない文章だなァ。
いつかもっとゾクゾクするくらい花白を病ませてみせるっ!!!