花帰葬
未来救世主×銀朱      
08.10.13          
 晴れたらいいね(10月)

何でこんな事になってしまったのだろう。
銀朱は深く溜息を吐いた。
脱走しようとした花白をとっ捕まえたはいいものの、そのままなし崩し的に…というか、認めたくはないのだが、丸め込まれた形で自分はここに居る。
しかもいつの間に増えたのか、救世主とこはなまで………。
そしてついさっき立ち寄った村で迎えに来たというこくろが合流し、それでようやく自分が群の玄冬の家に向かって歩いている事に気付いた。
途中まで転移で来た所為もあるが、以前に来た時は雪に覆われており、景色がまるで違ったために気付かなかったこともある。

―――しかし…不覚だ

花白が紅葉を観に行く、などと風情のある言い方をするから誤魔化されたが、「山に行く」と言ったら、玄冬のいる「群の山」だとすぐ気付いて良かった筈だ。
よくよく考えれば、彩の山々は未だ紅葉が始まっていない。
まぁ、花白にしても誤算だったろう、引率どころかオマケまで付いて来たのだから。
いつもより頬のラインが膨れているように見える花白の横顔を眺めながら、もう一度溜息を吐くと、急に背後から衝撃が襲った。
「ぅわっと…ぉ?!!」
「ターイチョー、何黄昏てんの」
たった今見ていたものより大人びた面差し…救世主だ。
「お前なぁ…急に後ろから組み付くな。危ないだろうが!」
「ダーイジョーブだって。倒れそうになったら俺が支えてあげるからさ」
そう言って笑う救世主の顔は、銀朱の肩を抱いているため、妙に近い。
不敵に笑う救世主の表情に心臓が跳ね上がったが、深呼吸を一つして平静を装った。
ただし、染まった頬の色は簡単には落ち着いてはくれなかったが。
「タイチョー熊サン家行くの不満そうだね。ま、ショージキ俺もそーなんだけど」
「だったら花白とこはなを連れ戻す手伝いでもしろ」
「まーいーんじゃない?偶にはサ。確かにここ暫らく俺も城下以外出歩かなかったし、熊サン家で秋の味覚用意してるんだろう」
救世主は先ほどこくろが言った言葉を繰り返す。
「山道歩くのはメンドーだけど、トレッキングだと思えばいいし。これでスポーツの秋と食欲の秋と紅葉と秋の風物詩が3つも揃っただろ」
「なら城に戻って読書の秋も満喫しろ」
「それはいつだって出来るし〜」
救世主は銀朱から身を離すと、両手を頭の後ろで組み、軽い足取りで銀朱の2、3歩先を進む。
そしてくるりと銀朱を振り返った。
「ほらほら、タイチョーも眉間に皺寄せてないで、せっかくの秋を満喫しよーぜ」
能天気なその言い方に、銀朱の肩から力が抜ける。
全身で溜息を吐いて、それから改めて周囲を仰ぎ見た。
鮮やかなその色彩に、今更ながら銀朱は息を飲んだ。
標高が高い所為か、既に赤や黄色に色を変えた木々が鮮やかで。
なのに暖かな色合いとは反して何故かその風情はもの悲しげで。
そういえば、銀朱自身日々の政務に追われて、こうして紅葉を見るのは久方ぶりだ。
ここ数年は執務室の窓から城の立ち木が色を変えてゆくのを眺めるばかりだったから。
だから、木枯らしが木々を揺らし、枝から離れた赤や黄色の色彩が目の前を舞う様さえ、銀朱には妙に新鮮に映った。
「………っ痛ぅ!」
近くで小さな声が上がる。
錦織なす光景に心奪われていた銀朱は、我に返って声のしたほうを見た。
救世主が目を抑えて俯いている。
突風で眼にゴミが入ったようだった。
「おい、大丈夫か?」
「あーうん」
右眼を押さえているため、残った左目だけで救世主は銀朱を見た。
「おい、擦るなよ」
「うーーーーっ、何か入った〜。タイチョー、見てみてよ」
「ったく、ほら、こっち向け」
全く世話を焼かせて、と思いながらも面倒見良く銀朱は救世主の顔を覗きこむ。
手で隠れていない紅い瞳が悪戯っぽく輝いた。
次の瞬間
銀朱は声を出せなかった

その唇を別の―――救世主の唇で塞がれたから

それは、先を歩いている花白や子供達の目を盗んでの短いキス。
だが、その感触は銀朱の意識を混乱させた。
答えを求めるように救世主を見ると、救世主は目を細めて笑った。
二つの紅い瞳を。
「きっ………貴様!騙したなっ!!」
「なかなかの演技派だったろ」
憤る銀朱の怒鳴り声などどこ吹く風、いけしゃあしゃあと悪びれる事も無く救世主が言う。
それが余計に銀朱の怒りに油を注いだ。
「貴様という奴はぁぁっっ!!!!!」
「アンタが悪いんだぜ、タイチョー」
突然思ってもみなかった事を言われて、銀朱は思わず疑問を含んだ視線で救世主を睨む。
ほとんど変わらぬ身長差だというのに、わざと身を屈めて救世主は銀朱を見上げる。
笑みを浮かべていたが、何故かその笑みに銀朱は寒気すら覚えた。
救世主は明らかに怒っていたのだ。
「アンタが、俺と居る時に他の男ばっか見てるからサ」
「他の………って」
つまり、先ほど恨みがましく花白を見ていたことに、救世主は嫉妬したと言っているのだ。
「お前なぁ…」
言いがかり的なその言葉にむしろ銀朱は呆れた。
そもそも、自分が花白を見ていたからと言って、救世主に責められる覚えは無いのだ。
だが………。
良く見ると怒っているというより拗ねたような救世主の表情(かお)に、銀朱の怒りも落ち着いてくる。

なぜ、悪い気はしないんだろうな

「そんな事でいちいちキスをされてたまるか」
自分の気持ちを誤魔化すように、救世主の頭を軽く小突く。
怒っている風を装ったつもりだったが、一瞬堪え切れずに笑みが漏れた。
それを見られていたことには気付かないまま、救世主を置いて銀朱は足早に歩き出す。
驚いたように救世主は先を行く銀朱を見て、それから性格と同様真っ直ぐな銀色の髪から覗く耳が赤くなっていることに気付き、小さく噴き出す。

いつの間にかずっと距離の離れた花白と子供達がこちらを向いた。
「銀朱―!おっきいのー!はーやーくー来ーいーよーぉ。お芋真っ黒になっちゃうだろう」
「疲れたなら休むか?」
「ってゆーか帰れよ」
「馬ァ鹿!こんなんで疲れるかよ」
銀朱の傍を白い風が通り抜ける。
擦り抜けざまに銀朱の手を取って。
「お…おいっ?!」
「ほらほら、ガキ共に負けらんないだろ、タイチョー」
戸惑う銀朱を振り返り、笑いかける。
その救世主の笑顔が紅葉より鮮やかで、銀朱は息を飲んだ。

そして、救世主に引きずられるように走り出した―――彼らを待つ子供達の元へと。




K家姉
妄想日時:’08.10.13
妄想場所:私邸にて

今回もまた、あ…アウト。

実は目の日もかけていた紅葉ネタです。
もっと色々紅葉描写したかったのですが、ずるずる長くなったために割愛。
ああ、もっとシンプル且つ的確な表現方法が思いつけば………orz
あと、花白さんと子供達の出番も丸っと削りました(笑)

タイトルは何となくイメージソングが某ドリカムの歌だったから。
あまり内容と関係無いよう←オヤジギャグ