花帰葬
初代救世主×初代玄冬        
08.11.29         
 1122の日(初救初玄版)

「おっ帰りなさぁ〜い、ア ナ タv」
扉を開けた瞬間、両手を広げて迎えられて、初代の玄冬は当惑した。
目の前には、普段の格好に…その、何というべきだろうか、やたらフリルのついた真っ白なエプロンを身に着けた、『自分の』救世主がいる。
似合う、似合わない以前に、滑稽に見えた。
硬直している彼に、エプロン姿の男は「アレ?」と言うように首を傾げてる。
彼の反応は予想外だったらしい。
だが、そんな仕草をしても、決して可愛いとは思わなかった。
「おっかしいなぁ…文官はコレをやられたら一発だって言ってたのに」
「………何の冗談だ」
ようやく驚きのあまり引っ込んでいた声が出た。
低く響くその声に、彼は赤い瞳で見上げる。
「んーーーー。いや、アンタがいなくて暇だったからさぁ」
彼は目を細めて笑った。
確かに、今日は黒鷹に呼ばれて、所用の為に居候中の彩の城を離れた。
そもそも何故自分が彩の城に居候する羽目になっているかと言えば、目の前の救世主のせいなのだが…いや、今はそれはいい。
すっかり平和ボケ…いや、平穏な生活に慣れた救世主は、最近は彼が離れるとこうして退屈しのぎにろくでもない事を思いつく。
それが生来の彼の性格なのだろうが、『英雄』であり『救世主』であった彼の姿を知っている自分には軽い衝撃を覚える。
もちろんそれで彼を見る目が変わるというわけではないのだが。
「結構これで、色々苦労したんだぜー。結婚願望の強い独身官吏100人に聞きましたアンケートで、 ダントツぶっちぎり1位のシチュエーションと、奥さんに着て欲しいコスチュームでセッティングしたり…」
「…本当に暇だったんだな…」
「だからそう言っただろ。で………」
救世主の赤い瞳が覗き込む。
「どーだった?」
「どう…と言われても………」 何と答えていいか判らず、彼は思ったままを口にする。
「驚いた」
「で?で?どーよ?こう、キューンとしたとか、幸せだなぁとか思ったりした?」
「いや………驚いた」
「ちょ…アンタ、驚いただけかよ!!もっと他に何か無い?」
他に………?あの時思った事をもう一度反芻してみて、それからポツリと呟く。
「それから…心配だった」
「は?」
「お前が…熱でもあるんじゃないかと」
あーーーーーっと呻いて、片手で目を覆い、救世主は天を仰いだ。
「………………………まぁ、いいや。うん、イキナリだったしね。じゃあ次!!」
そう言うと、救世主は顔の下で両手を組んだ。
そして、上目遣いで小首を傾げる。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、アタシ?」





しばらく、無音の時間が流れた。
懸命にブリッ子ポーズを維持していた救世主だったが、次第にふるふると小刻みに震えだし、笑顔が引きつりだし、 終いにははぁーーーーーーと盛大に息を吐いて脱力した。
「悪い、降参。つーかそんな風に黙って俺を見てんなよ」
居た堪れなくなるじゃないか、と救世主は唇を尖らす。
まるで子供のような仕草だった。
それから「もーいーや」とぼやいて、彼の腕を取る。
再び当惑する彼に、救世主は満面の笑みを向けて、グイグイと腕を引っ張った。
「飯、食ってないだろ?腹減ってねぇ?」
「それは…まぁ」
「用意してあるんだ、食うだろ」
その、問いかけと言うより確認に、彼はただ頷いて見せた。
しかし………
こう来るとは思わなかった。
目の前にあるのは、むしろ懐かしいとすら言えるような料理の数々。
決して普段、彼らの部屋に届けられる城の料理とは程遠い。
彼には馴染み深い―――野戦料理だった。
「いちおー、不味くは無い筈だぜ。つーか俺、料理って言ったらこんなんしか作ったことないし」
「………お前が作ったのか」
「そーだよ」
むしろ不貞腐れたような声色に、彼は帰宅して初めての笑みを浮かべた。
それは、酷く淡く判りにくい程度のものであったが。
「笑うなよ」
「いや、昔を思い出しただけだ。多分お前は俺より料理が上手い」
長の子として生まれ、自らもまた長となった彼には料理はそう馴染み深いものではない。
父と反目して放浪した時に、簡単な料理を覚えただけだ。
それに対して、救世主の作ったものはレパートリーもあり、作り慣れている感すらある。
恐らく彼はこうして時には当番として仲間の為に腕を奮ったのだろう。
「で?食う?」
先ほどまでのテンションはどこへやら、むしろ恐る恐るといった態の問いかけに、短く彼は答えた。
「ああ、頂こう」

懐かしい食事が終わった後、用意されていた風呂で一日の疲れを流していた。
湯船に浸かり、人心地つくと思い出されるのは、今日の妙な態度の救世主の事。
「まぁ、何を考えているのかは大方想像できるが」
そうして暫らく思考の海にたゆたっていると、その思考を遮るように突然風呂場のドアが開いた。
「お背中お流ししまーーーーっス」
バーンと勢い良く登場した救世主は、何故かバスタオルを女巻きにしていて、彼は我が眼を疑った。
もちろん、普段の彼はそんな事をしない。
訝しがる彼の表情に、救世主は肩を落とす。
「………ってあーーーー、コレも外したかぁ………」
「本当に…熱とかはないのか?」
目を点にしたまま、彼は呆然と呟く。
んーーーーーと、決まり悪そうに、彼は頭を掻く。
「いや、せっかくだからアンタが『帰って来て良かった』と思うようにセッティングしたんだけど………」
「俺は………」
間に溜息一つ挟んで、彼は救世主の眼を見る。
「帰ってきてお前の顔を見れば、そう思っている…いつもな」
彼の言葉に救世主は息を飲んだ。
それから頬を染めて、脱力するように息を吐く。
「アンタ、それ、反則」
「事実だ」
「そーゆー事、シレっと言うんだもんなぁ」
降参、とでも言うように小さく両手を挙げた。
そしてゆっくりと、救世主は彼に近付き、湯船の縁に手を掛けて覆いかぶさるように口付ける。
彼はそれを眼も閉じずに受け入れる。
桜色の睫毛が震えて、そっと救世主の目が開く。
見詰め合ったまま、唇を離し、吐息が掛かるほどの至近距離で救世主が囁く。
「好きだよ」
「知っている」
答えて瞳を閉じれば、再び救世主の唇が降りてくる。
今度は彼の全てを求めるような、深く激しく情熱的な口付け。
彼もまた、言葉では伝えきれない想いを伝えようとするように、その口付けに応えた―――




K家姉
妄想日時:’08.11.1
妄想場所:自室にて

うん…わかってたよ?
だから没ったよ?
とりあえずツッコミ無用で………K家妹に散々ツッコまれたしorz
いい夫婦の日というよりは、ただの新婚さんごっこです。

良ければ「救世主」のセリフはそのまんまの、救銀版もご覧下さい。
ふふ…ふふふ…(虚)