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花帰葬 玄冬×銀朱 |
| 08.11.29 |
| 1126の日(玄銀版) |
はぁーーーーーっと銀朱は深く息を吐いた。 適温に熱せられた湯が、今日の政務で疲れた体を癒してくれる。 指を絡めて体を伸ばせば、強張っていた体がほぐれるようで、もう一度深く息を吐いた。 風呂はいい 鼻先まで浸かるように、銀朱は体を沈めた。 頭の中も空っぽにして、しばし様々なしがらみから自分を解放した。 薄く目を開ければ、透明な湯の中に自分の体が揺らめいて見える。 左の腹部に引き攣れたような傷跡がぼんやりと眼に入った。 痛みは既に無い。 だが、動きによっては、僅かに鈍痛を感じて反射的に動きが制限されることもあった。 城が落ち着いたら、湯治にでも行きたいな と、半ば現実逃避のように想像する。 本当の意味で城が落ち着くまでには長い時間が掛かるだろう。 だが、識者も城に集まり、若輩の銀朱の負担は幾らか軽減されてもいた。 それでも、殺人的な仕事量なのではあるが。 だがこうして風呂に入れる余裕があるのは、自分を支えてくれる部下達の心尽くしと、 「おい、隊長」 脳裏に思い浮かべた相手の顔が、不意に視界に飛び込んできて、銀朱は動きと思考を止めた。 そう、今となっては銀朱の体調管理を生き甲斐にしているような、玄冬の存在。 「な、何だ」 肌を見せる事に今更羞恥を覚えるような相手では無い筈だが、銀朱はまるで生娘のように動揺していた。 玄冬はそんな銀朱に意も解したようでも無く、風呂場に入ってくる。 タオル一つを腰に巻いたままで。 「きっ………貴様!何のつもりだ!!」 「一緒に風呂に入るつもりだが」 事も無げにそう玄冬は言う。 そして、動揺のあまり言葉を失った銀朱に構うことなく体を流して湯船に入ろうとする。 その水音で、ようやく銀朱は我に返った。 ザバァと湯を跳ね上げ立ち上がると、玄冬とは反対に湯船から出ようとする。 「冗談じゃない!俺は上がるぞ!!」 「何故だ?」 「何故も何も………、俺はお前と風呂に入るつもりはない」 「ああ、確かに2人で入るには狭いな………」 「そーゆー事じゃない!!!!!!!!!!」 ズレた玄冬の言葉に、銀朱は思わず力の限り怒鳴りつけた。 はぁはぁと肩で息をしながら玄冬を睨みつけると、玄冬はきょとんと自分を見ている。 ―――駄目だ、わかっていない――― 無力感に思わず脱力する。 「いいから、風呂は一人で入れ、俺は上がる」 溜息混じりに銀朱はそう言った。 その銀朱の腕を玄冬が掴む。 「何だ」 「あんただって、入ったばかりでまだ温まっていないだろう」 「それがどうした」 「風呂は健康維持に非常に効果があって…」 「今は貴様のご託を聞いている余裕など無い」 長くなりがちな玄冬の話をそう無理矢理に打ち切って、玄冬の腕を振り払おうとした。 が、 「つまり、俺が言いたいのは………」 逆に玄冬は力を籠めて銀朱の腕を掴むと、無理矢理引き寄せる。 足場の悪い浴槽内で、踏ん張りをきかせることも出来ず、銀朱は抵抗空しく玄冬に引き寄せられた。 派手な水しぶきが上がり、2人でもつれる様に湯の中に倒れ込む。 「あ…っ、危ないだろう!!馬鹿者!!!!!」 顔を上げて怒鳴りつけると、妙に玄冬の顔が近い。 改めて自分達の姿を見れば、まるで銀朱自身が玄冬を押し倒したような格好で、2人湯船に浸かっていた。 「俺が言いたいのは、風呂はゆっくりと入れ、ということだ」 「だったら…そう言え」 「あんたが俺の話を聞かなかったんだろう」 「お前の話はくど過ぎるんだ」 それから………と、小さく呟くと銀朱は真っ赤な顔で玄冬を見据えた。 「いい加減、腕を離せ!!」 「腕を離したら出て行くだろう、あんた」 「こんな格好で風呂に入っているほうが落ち着かんわ!!」 何せ、玄冬の顔は吐息も届くほどに近いし、少しでも体を支えている腕の力が落ちれば玄冬の胸に飛び込む 羽目にもなる。 それにこの体勢………銀朱にとって耐えられるものではない。 「大体貴様、何で今日に限ってこんなに一緒に風呂に入りたがるんだ?」 「実は、今日、注文していた薪が届かなくてな、一人分しか焚けないんだ」 街は不便だ、と玄冬はこぼす。 それはそうだ、玄冬が暮らしていた山奥と違って、一国の首都ともなれば、たかが薪一つにも金を 出さなければならない。 冬も近付いてきたこの頃だ、薪の需要は増しているのだろう。 なるほど、玄冬にとってもいかんともしがたい理由というものがあったという事か。 だったら、もっと前もって言ってくれれば良かったものの。 銀朱は深く長い溜息を吐いた。 「事情はわかったから手を離せ」 銀朱の様子から風呂から上がる事を断念したのを見て悟って、玄冬もゆっくりと手を離す。 不思議とあれほど力を籠められたのに、掴まれていた所はほんのうっすら赤くなっているだけだった。 勿論痛みも無い、この赤みもすぐに消えるだろう。 ようやく自由になり、とにかく銀朱は玄冬から一番離れた場所に身を寄せた。 それから膝を抱き寄せる。 身を小さくして湯船に浸かる銀朱の姿に、玄冬は溜息を吐いた。 当然だ、この湯船は小さすぎる。 決して小柄とは言えない大の男2人が入っているのだ、現に玄冬自身も窮屈な格好で湯に浸かっている。 もっとも、銀朱がそんな格好で風呂に入っている理由は他にもあるのだが、玄冬の理解の範囲外の事だ。 もう一度ふぅと玄冬は溜息を吐いた。 銀朱がこちらを見る。 怪訝そうな顔をしていた。 「やはり狭いな」 「そんなの、最初からわかっている事だろう」 銀朱は眉を顰める。 玄冬は湯の中で立ち上がると、銀朱の傍に近付いた。 「お…おい、貴様、何をする気だ」 「限りあるスペースを有効に利用するならば………」 まさか、と玄冬の一挙一動を見守ると、想像通り玄冬は銀朱の背後に回り、後ろから抱きしめるように… というか所謂『抱っこ』するように身を沈めた。 ぎゃーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!! っと最早声にならない声を上げて、今度こそ銀朱は立ち上がろうとした。 だが、その動きは優しく抱きしめる玄冬の腕に阻まれた。 「はっ………離せ!!!!!!」 「狭いんだ、仕方ないだろう」 「こんな状態でゆっくり入れるかーーーーーーっっっっっ!!!!!!」 確かに2人向き合ってるよりは幾らか広くもなるし、足も伸ばせる。 しかし、こんな密着はその…なんだ…色々困る。 今の自分達の姿も羞恥に耐えないが、その…アレの感触とか………っ!!!!! 何とか玄冬の腕から逃れようと暴れもがき喚く銀朱に、玄冬は辟易したように眼を伏せた。 ふと、その視線の先に淡く色づいた銀朱のうなじがあった。 引き寄せられるように、そこに唇を寄せると、ビクンと銀朱の体が小さく跳ねて、それから硬直する。 ぎ、ぎ、ぎと壊れたブリキ人形のように首を巡らせて、銀朱は真っ赤な顔で玄冬を睨んだ。 「き………き、さ、ま、ぁ………」 「したくなったんだ」 「したくなったで済むか!馬鹿者っ!!」 しれっととんでもない事を口にする玄冬にそう叫ぶと、玄冬は不思議そうに首を傾げる。 「そもそも風呂とは裸の付き合いをするところだろう?」 「間違ってはいない…全部は間違っていないんだが………」 銀朱は思い切り息を吸った。 これでもかというほど息を吸い込んで…そして、全て一気に吐き出した。 「根本が間違っているんだ!馬鹿者ーーーーーーっっっっっ!!!!!!!!!」 酸素がすっかり抜けきると、まるで糸が切れるように銀朱は意識を失った。 その間際、強く心の中で誓いながら ―――金輪際、こいつと一緒に風呂に入るものかーーーーー!!!!!――― くたりと自分の胸にもたれかかる銀朱を見て、玄冬は小さく息を吐いた。 「風呂場で暴れるからのぼせるんだ」 残念ながら、今の玄冬にツッコめるものは誰もいなかった。 |
K家姉 妄想日時:’08.11.15 妄想場所:自室にて 自分はG氏を書くのは向いてないと知った晩秋のある日。 ふふ…ふふふ…(涙) とりあえず無駄に長いです。 没って良かった。 |