花帰葬
花唄        
08.11.29         
 小雪(11月)

白く冷たい花のようにも見えるそれは…なんの予告もなく空から降り、あっと言う間にそれまで見慣れた景色を白く染めていく。

そう…まるで全てを無に帰すが如く。


「あ…足元気をつけてくださいね!?滑りますから」
「わかってるわよ」
「あー…寒くないですか?」
「大丈夫よ」
「本当に本当に気をつけて下さいね。その…貴女一人の…体ではないのだから」
「わかってるわよ」
そう言うと彩紅は真っ白な大地に足を踏み入れた。

「やっぱり…俺が抱き上げていきましょうか?」
「結構よ。その方がかえって不安だわ」
それはどういう意味なのか聞きたかったが、予想がついたので聞くのを止めた。

「それにしても…まだ11月だというのに、よく降りますね」
「………」
時雨の何気ない一言に彩紅はお腹に手を当てる。
「なんだか…「玄冬」の話を思い出してしまいます」
「止めて頂戴、時雨…そんな話…」
「…すみません。胎教にもよくないですね」
「そんな筈…ないんだから…」
「え?」

彩紅はお腹を摩り、頭の中で何度も否定した。
お腹の子供が大きくなるにつれ、言い知れない不安が募るようになっていた。
最近では悪夢を見て目が覚める事もしばしば。

「時雨…貴方、雪が怖い?」
「いえ…」
「私はね…やっぱり好きよ、雪…」
「………」
「そう…思ってはいけないのかもしれないけど…」
「彩紅?」
「そろそろ戻りましょうか」
「あ…はい、そうですね」

何も触れなかったが、時雨には伝わっていた。
彩紅の不安が。
彼女が時々見せる影のある表情も見逃してはいなかった。
それでも言葉に出してしまったら、ソレが真実になってしまいそうで恐かった。
だから…お互いそれとなく口にするのを避けていた。

「やっぱり…」
「きゃっ…!!!!!」
「俺が抱き上げて帰ります」
時雨は彩紅をお姫様を抱き抱えるようにして持ち上げ、雪の上を歩き出した。

その腕の中で彩紅はお腹の中の、まだ見ぬ我が子に話し掛けるのだった。

「例えあなたが…どんな宿命を持って生まれようとも…私はあなたに生きていて欲しい。信じて…あなたは愛されて生まれてきたということ。きっと…私が守るから…」




K家妹
妄想日時:’08.2.8
妄想場所:自室にて

彩紅&時雨シリーズ、四季を通して二人の気持ちが通じ合い子を授かり…とやってきて恐らく企画として書くのはこれがラストでしょうな。
少しは時雨も男らしくなりました(笑)
玄冬システムの中のもう一つの犠牲者…でも彩紅さんも時雨も心から嬉しかったに違いない。