花帰葬
白家族         
08.1.4          
 祝彩(1月)

朝から国王陛下のもとへ新年の挨拶に訪れる者でにぎわっている、ここ彩の城。
その城内の一画では、その扉が開くのを今か今かと待ちわびている人々が列を成していた。

「明けましておめでとうございます、救世主達よ」
扉の内側、預言師こと白の鳥に与えられた一室では、清廉な美貌がニコリともせずに、目の前に立ち並ぶ3人に言葉を掛けていた。
「明けましてオメデトウゴザイマス」
何が楽しいのか、ニコニコと笑みを浮かべながら挨拶を返すのは、桜色の髪の大人びた風貌の青年。
「あけまして、おめでとう」
それに倣うように、一生懸命に声を張り上げ挨拶するのは、同じく桜色の髪の小さな男の子。
「………明けましておめでとうございます」
そっぽを向き、青年とは反対に不機嫌そうに挨拶をしたのは、これまた同じく桜色の髪の少年だった。
その、少年の顔を覗き込み、青年が愉快そうに言う。
「花白〜、新年から景気悪いね、お前」
「そりゃあね…」
ジト目で青年を睨むと、少年―――花白はバン!と自らの胸に手の平を叩きつけ、見ろというように今の自分の姿を強調した。
「新年早々こんな格好をさせられればね」
花白の姿は、穢れの無い白い着物に、紅い袴、いわゆる巫女さんの衣装を身にまとっていた。
着ているのは花白だけではない、青年―――未来から来た救世主と、男の子―――はなしろ、通称こはなもだ。
髪の毛の色と相まって、妙にお目出度い。
「なんだよ、この格好!!ドレスみたいなスカートまで穿かされて!いきなりこんな格好させられれば誰だって不機嫌にもなるよ!!」
「スカートじゃなくって緋袴って言うらしいぜ」
救世主は、自らのまとった緋袴の裾を摘み、貴婦人が礼をする時のように広げてみせる。
「………何で、あんたはそんな風に着てられるんだよ…気が知れないよ」
「え?僕も変?」
盛大にため息をつく花白の袖を掴んでこはなが見上げてくる。
「お前は可愛いから大丈夫だよ。ちっこいの」
「ぷぅー、僕は『かわいい』じゃなくて『かっこいい』の方がいい!」
抗議の声を上げるこはなを無視して、花白はこんな格好をする羽目になった元凶―――麗しの預言師、白梟を睨むように見た。
「で、何だって僕達にこんな格好をさせたんですか」
殺人的なまでに不機嫌なその視線をそよ風のように受け流して、騒動を見守っていた白梟はようやくその口を開いた。
「我々は既に救世主と白の鳥としての使命を果たしたにも関わらず、陛下はこの城に滞在をお許しになり、以前と変わらぬ待遇を頂いております」
「それで?」
「政務に携わり、日々そのご恩をお返ししてはおりますが、それだけには多分なご厚遇にせめて年に一度くらいは感謝の意を表すのも宜しいかと」
「…とても、白梟の考えとは思えないんだけど…」
「ありゃあ、多分黒鷹サンに何か言われたんだぜ」
ひそひそと小声で会話する花白と救世主に、白梟が温度を感じさせない瞳を向けると、それだけで2人は凍りついたように黙り込む。
「余計な詮索はしなくて宜しい」
「はぁーい」
「…はい」
「ねぇねぇ、白梟。僕たちこの格好で何すればいいの?」
やれやれと溜息をつく白梟の元に駆け寄ってきたこはなが見上げると、先ほどの冷たさとは打って変わり、春の陽光のような暖かで穏やかな眼差しで、 目線の高さをこはなに合わせるようにかがみこむ。
「お御籤を配るのですよ」
「おみくじ?いつも白梟が作っているやつ?」
「ええ、そうです。人々は物事の始まりに事の吉兆を占う慣わし。新しい年の始まりにこれほど相応しいものはないかと」
「それで、結局僕達がこんな格好をしなければならない理由はなんですか」
焦れたように花白が口を挟む。
すっと立ち上がって、改めて白梟は3人の救世主を見た。
「その衣装は他の箱庭では神に仕える者の神聖なる衣服だとか。神の導きたるお御籤を配るのに、これほどふさわしい格好はありません」
「………だったら、司祭でも神官でもなんでもいーじゃないか…。何が悲しくてこんな女の子みたいな格好…」
「まぁまぁ、そうブーたれんなよ。いーじゃん、面白くて。新年の余興には丁度いいだろ」
ブツブツと不満を漏らし続ける花白の肩を、救世主が後ろからガシッと抱く。
その救世主を涙目で睨みつけながら、花白は叫んだ。

「今日は玄冬も来るのにぃぃぃ!!!!!!!」

魂の叫びに、しばし誰もが沈黙した。
あきれたように、救世主が口を開く。
「だったら熊さんにも同じ格好させりゃいーだろ。みんな同じ格好なら別にどーってことないじゃん」
「……………………………………………………………仕方ないなぁ」
たっぷり押し黙ったその間にどのような葛藤があったものか、花白は肩を落とし脱力するように息を吐く。
なぜかその頬が赤くなっていたが、それについて突っ込む愚か者はこの中にはいなかった。
「さぁ、話が纏まったところで扉を開けますよ…いいですね」
全ての視線が扉へと向けられる。
重厚な扉越しでも、その向こう側から異様な熱気を感じることが出来た。
「預言師様の」お御籤を「救世主様に」手ずから渡して貰えるということで集った人々の熱気だ。

この部屋は今から戦場になる。

誰のともつかない、息を飲む音が聞こえる。
「…正直、いいとは言いたくないけど…」
「構えろよ、花白!ひよこ!」
「おーーーーーっ!!かかって来い!!」
所定の場所にスタンバイして、救世主達は気合を入れる。

そして、扉は開かれ、今年最初の戦いの幕が切って落とされたのだった―――。




K家姉
妄想日時:’08.1.1
妄想場所:色々(主に車内)

本当はオールキャスト4本立てで書こうと思ったんですが、出だしで既に長くなったので、白家族のSS1本に絞りました。
いきなりコスネタです…とりあえず笑って許してください。本人、想像するのは楽しかったです。
タイトルは今年見かけたお酒の名前から。