花帰葬
研究者・鳥          
08.1.4          
 Cure Dream(1月)

「あと…少しか……」
光る柱を見つめ、その男は呟いた。

コチコチコチ…
と規則的に刻まれる時計の音を静かに聞いている。

「時間か…。今年も無事に年を迎えたようだな…」

この光の柱こそこの箱庭の中枢であり、この世界を動かす全て。

新しい年を迎えるこの時にシステムの異常…即ちバグが発生しないように見守り、もし何かしらの異常が発生した際に即修正が出来るようにするのが、創世の主の二羽の鳥の役目である。
そして、それを見守るのが彼の毎年の恒例となっていた。

普段なら二羽の鳥が立派に役目を果たしているのに、今年は違った。 正常にシステムが動いている事を確認し静かに振り返る。
そこには時を待ちきれずすやすやと眠る二人の姿。

「玄冬ぉ…肉を…くれぇ…むにゃむにゃ…」
「きゅ…せいしゅ……」

「…これではどちらが補佐役か…わからぬな……」

暫く二人の姿を眺めた後、彼はその隣へと移動し、腰を下ろす。
「…望みの夢を見るがいい…」
そう言いながら二人の額に軽く手を触れた。



「やぁ。白梟…」
名前を呼ばれて白梟は振り返る。そこには忘れることの出来ない人の姿があった。

「お前か…」
聞き覚えのある声に振り返る黒鷹。
「また…キミに会えるとは思わなかったよ初代玄冬」
「玄冬と呼ぶなと言った筈だが」
「そうだったね」
そう言うと二人は微笑んだ。


「久しぶり。元気そうだね」
「救世主…!!!!何故…ここへ…?」
「何故って…。もっと他に言うことない訳?」
小さな溜め息が洩れる。
「貴方は…私の事を恨んでいるでしょうね…」
自分の使命と敬愛する主の望みを叶えるためだけに、人ではなく救世主であることばかりを願ってきていた。
それ故に聞いてみたいと思っていた。

「恨む?まさか」
軽く笑って否定した。
「オレは感謝してるよ。オレが救世主だったことも、あんたがオレの鳥だったことも…アイツが玄冬だったことも…全てね」
「え…」
「だからオレは他の人より充実した人生を過ごせたしね。色んなもの見て、知って、感じて…学んだ。感謝はしても恨んだりしてないよ」
「オレもあんたに聞きたい…」
一瞬間を置いて問う。
「あんたは…幸せ?」
予想外の質問に白梟は戸惑った。
「この世界に生み出された事、オレや他の救世主に出会ったこと…そして、今」
「はい…幸せですよ」
「まだあんたの望みは叶ってないけど」
「それでも…私は幸せです」
「良かった」
白梟の答えに救世主は満面の笑顔を見せた。


「お前が俺の頼みを聞いてくれたこと…ちゃんと見ていた。感謝している」
「私はキミの頼みには弱いんだ」
黒鷹はそう言って苦笑した。
「俺は…玄冬としては失格だな。だが…自分で選べた事を幸せに思う」
「いや…キミは間違いなく玄冬だ。今の私は自信を持って言えるぞ」
表情も変えずにただ淡々と話す彼に黒鷹は自信満々にそう言った。
「そうか…。お前が俺の鳥で良かったと思う」
「私はその言葉だけで幸せだよ」
二人は少しだけ微笑んだ。



「だから…玄冬…肉を…」
「ありがとう…救世主…」

「………」
男は立ち上がり光の柱の傍へと歩き出す。
柱の前に立つとその姿が少しずつ消えていく。振り返り、幸せそうに眠る二人を見ながら、こう呟いて姿を消した。

「こういうのも…たまには悪くはないだろう…?我からの…お年玉というやつだ…」




K家妹
妄想日時:’08.1.1
妄想場所:車内で

花白と玄冬で甘々なネタ出しをしている最中に空から降って来たネタです。
タイトルはK家姉に決めるのを手伝って貰いました。