花帰葬
初代        
08.2.2          
 the National Foundation Day(2月)

祝祭の鐘が鳴る。

戦争を奇跡的に生き長らえた古い大聖堂を眺めて、彼は目を細めた。
その視界を春の花の花弁が横切る。

今日はこの『彩』という国が誕生した記念日―――

人々の歓声を遠くに聴きながら、彼はただ街並みと、今日の良き日を国中に知らせるよう鳴り響く鐘とを見つめていた。
その姿は、とても建国の立役者となった『救世主』とは思えない。
今日は晴れやかに胸を張り、式典にでも出ているのが彼にとって相応しい姿だろう。
よもやこんな街を見下ろす丘の上で、一人立ち尽くしているとは誰も思うまい。

もう、幾度この鐘の音を聴いただろう。

どこからともなく降ってくる白い花びらは、彼の時をあの冬の日に巻き戻す。
彼には大聖堂が打ち鳴らす鐘の音が葬送のものに聴こえた。


自らの命と引き換えに世界を救ったとある男のための―――


自嘲気味に彼は唇に笑みを浮かべた。
それはいつも彼が『救世主』と呼ばれるたびに押し殺していた笑みでもあった。
ため息の代わりに、ぽつり、呟く。

「例え俺が死んでも、この国はお前に感謝し続けるよ。今日という日を祝いながら」

パレードの賑やかな音楽に合わせ、人々はそうとは知らぬまま、口々に彼(か)の者の名を呼び称える。

「いつまでもあんたに踊らされっぱなし、なんてのは癪だからな」

喜びに沸き立つ人々を眺めながら、傍らに誰かがいるかの様に憎まれ口をたたいて可笑しそうに笑う。
その彼の耳に、遠くで彼の名を呼ぶ声が聴こえた。

「おっと、時間か…」

振り向くと、式典用の正装を身に纏った部下が何人か、彼を探して歩いているのが見えた。
ここを見つけられるのは都合が悪いな
と一人ごちて、丘の上、街を見守るように立っている一本の木の根元に視線をやった。

そこには何も刻まれていない石版がひっそりと佇んでいる。
この場所は、彼にとって知られたくない…知られるわけにはいかない秘密の場所だった。

じゃあ、またな、と口にして、特別な…今は失われた大切な名を呼ぶ。


それは『玄冬』などではない、この国の名と同じ音の、自分よりも遥かに『救世主』の名に相応しいある男の名だった。




K家姉
妄想日時:’08.1.27
妄想場所:自宅にて

本当は節分ネタだったんですが、どうしても工口ネタになるので、微妙にマイナーながら建国記念日で書いてみました。
というか、既に2本お題を上げ、なおかつこんなオイシイ記念日が2月だった事に気付いたK家妹の絶望っぷりが可笑しかった。
ちなみに建国記念日は2/11です。みんなで祝おう☆
タイトルはまんま、建国記念日を英語にしたものです…捻れ(苦笑)