花帰葬
花唄         
08.2.2    
 just for you(2月)

彩紅は落ち着かなかった。
時間を確認してみたり、外を見たり、意味なく立ち上がっては座ってみたり…
そわそわして落ち着かないのだ。

「…ったく。時雨はいつ帰ってくるのよ…」

いつもの山歩きか街に本でも買いに行ったのだろうとは思っていたが、時雨の行動が気になって仕方がない。

「今日が何の日かわかってるのかしら!?………わかるわけないわね……」
すぐに答えの出る疑問にため息をつく。
帰宅したら嫌味の一つでも言ってやらなきゃ気が済まないと思いながら、すぐ頭の中で却下した。

「ダメね…私。全然素直になれなくて…」
だから今日は素直に自分の気持ちを伝えようと思っていた。
自分の気持ちを込めたチョコレートと共に。

「彩紅!!!!!!!」
勢い良く部屋のドアが開き、時雨が駆け込んできた。

「何よ?そんなに慌てて…」
「あ…すみません…」
「それで…何かあったの?」
「あ…そうでした!あ…あの……っ、こ…コレなんだけど…」

時雨がそっと差し出したのは小さな包みと小さな花。

「何…?これ……」
「十季に…バレンタインデーというイベントの話を聞いて…。それで…俺の気持ちをキミに伝えたくて…。だから…その…」
「………」
十季の話し方が悪かったのか…それとも勘違いしたのか…。
彩紅の緊張はすっかりどこかへ飛んでいってしまった。

「時雨…あなたって本当に何もわかってないのね」
「え!?あ…あの…俺…何か間違ったことしてますか…?すみません…」
「謝ってばっかりね」
「す…すみません」
「あなたにこんな事されたら…私…」

用意したチョコレートを差し出すタイミングをすっかり逸してしまっていた。

「あなた…そのチョコ買うの恥ずかしくなかった?」
「えっと…女性が多くて…何故か注目を浴びてしまいました…」
「でしょうね。いい?バレンタインと言うのはね、女の子が好きな男の子に気持ちを伝える日なの」

彩紅の言葉に時雨は絶句し、固まってしまった。

「…俺のしたことは…間違ってたんだね…」
「いいじゃない」
「え?」

彩紅は時雨が差し出したチョコレートと花を受け取る。

「あ…彩紅!?」
「いいじゃない。世界に一組くらい…こういう夫婦がいてもおかしくないわ」

そして、ありがとうと言って微笑んだ。
時雨は恥ずかしさと嬉しさで再び固まってしまった。

「でも…私が用意したチョコは捨てるしかないわね」
「そんな!!」
「嘘よ。…私のチョコも…食べてくれる?」
「…はいっ!勿論、喜んで!!」

彩紅は自分が用意したチョコを時雨に手渡すついでに背伸びをして時雨の頬に口付けた。

「あ……彩紅…さんっ!?」
「ホワイトデーには…私からあなたにお返しするわね」

そういうと少し頬を赤く染めた彩紅は微笑んだ。




K家姉
妄想日時:’08.1.11
妄想場所:自室

時雨パパがママを呼び捨てにしてるわりに敬語というのは、私のこだわり。
告白後だけど玄冬が生まれる前の自分的萌設定。
男らしいツンデレ母さんに、乙女なパパの組合わせ好きです!
製作時間10分ていど(笑)