花帰葬
こはな×こくろ        
08.5.5         
 背のび(5月)

「さぁ、おいで!ちびっ子達」
山奥の小さな小屋で黒鷹はそんな風に招集をかけた。

「呼んだか?」
まずはこくろが現れ、その後ろからこはなも顔を出す。

「まずはこくろ、キミからだ。さぁ早くその柱の前に立って」
「ちょっ…ちょっと待て。一体何を始めるつもりだ?」
嬉しそうに楽しそうに黒鷹はこくろの両肩に手を掛けると、家の中の柱に押し付けようとする。

「ねぇねぇ…この柱の線…なぁに?」
黒鷹がこくろを立たせようとする柱を見て、こはなが指をさし、聞いた。

「それはね…背比べの跡だよ、ヒヨッコ」
黒鷹はさらに嬉しそうな顔をして答えた。
その答えを聞き、こくろは「あぁ、そういう事か」と黒鷹が何をしようとしているのかを察した。

「背…比べ?」
「あぁそうさ。この柱の線は、あの子が…玄冬が小さいときから毎年どれだけ大きくなったかを印したものなんだ」
「一年に一度こうやって身長を測って印をつけておくと一年後また測った時にどれだけ背が伸びたかわかるという、原始的成長記録法だ」
「ふぅん…」
わかったのかわからないのか理解しえない相槌を打つこはなを見て黒鷹は続けた。

「ほら見てご覧。この低い…こはな、キミと同じくらいの所にある線、わかるかい?」
「古い印だから見づらいな」
「これ…なに?」
「これが玄冬が子どもの頃の今日、測った身長なんだ」
懐かしそうに話す黒鷹。

「えーーっ!!!!!!大きいくろと、こんなに小さかったの!?」
黒鷹の話に驚くこはな。
「あぁそうだよ。あの子だって、最初からあんなに大きかった訳じゃない。最初は君達みたいにちびっ子だったんだ」
「最初からあの大きさだったら産んだ母親は泣くぞ」
こくろだけは冷静だった。
「こんな事もあったなぁ。…私の背を測った印…あぁ、ここだ」
黒鷹は言いながら一つの印を指でなぞった。
「玄冬はこんなに小さくて、この印を見て「絶対追い付いてやる」なんて言って…可愛かったなぁ。 今や追い付く所か、余裕で追い抜いてくれて…かわいくなくなった」
話しながら泣き始める黒鷹。
しかし、次の瞬間には復活していた。
「と、いう訳でキミ達も頑張ればあの子みたいに大きくなれるぞ!」
「言われなくても想像つくが…」
相変わらず淡泊なこくろと対象的に、こはなは目を輝かせて「スゴーイ」とはしゃぐのだった。

「ほら…今のこくろはこの高さ…流石に子どもの頃のあの子と大差ないなぁ…」
「中身は大きく違うが外見はそう大差ないな。一応」
子どもにここまで言われる玄冬に少し同情。

「そして…ヒヨッコはここ。………ん?どうしたヒヨッコ」
自分の印とこくろの印を見比べて難しそうな表情をうかべるこはな。
うーん…と唸っている。

「僕…くろととこんなに差があるとは思わなかった…」
そう言うと悲しそうな表情を浮かべる。
「はなしろ、お前はこれからまだまだ伸びる。そう落ち込む事はないと思うぞ」
こくろの慰めを聞いて、こはなはこくろの手をぎゅっと握った。

「僕…絶対くろとに追い付くから!くろとより大きくなって絶対くろとをお嫁さんにするから!」
言うだけ言うと山小屋から駆け出していった。
残されたこくろはすっかり固まってしまった。

「こくろ〜?どうしたんだい?」
ちびっ子は無茶を言うなぁと思いつつ、黒鷹はこくろの石化を解こうと必死だった。
「黒鷹…背を縮ませる方法か伸びなくする方法を知らないか?」
「へ?」
「知らないなら自分で調べる。邪魔するなよ」

そういうと、部屋に篭って分厚い本をめくりはじめた。

普段淡泊で辛口なこくろもこはなの前では冷静さも欠くのだろうが…
変わりに黒鷹が石化してしまった。


そんな春の一日であった。




K家妹
妄想日時:’08.1.31
妄想場所:自室にて

五月はこはなで行こうと決めていました(笑)
没ネタも数個ありますが全てこはなの話です。
健気なこくろが大好きです!
五月五日の背比べネタです。