花帰葬
花唄        
08.6.1         
 雨と太陽(6月)

空から降るもの。
それは雪から桜になり…そして…

彩紅は家の中から外を眺めて溜息をついていた。

いつまで眺めていても変化することのない外の風景に、段々と苛立ちを覚えてきた。
そして…
「ああっ、もう!一体いつまで降るのよ!?」
ついに爆発した。 春が過ぎ、この街にも梅雨という時期がきた。

止む暇もなく降り続ける雨に、家の中に閉じ込められていたのだ。

「彩紅さん…雨…嫌いですか?」
彩紅の背後から恐る恐る時雨が声をかける。

「えぇ。大っ嫌い!!」
「そ…そうですか…」
ハッキリキッパリ言い切られてしまった時雨は少し寂しそうに呟く。

「雨なんか一つもいいことないじゃない!洗濯物は乾かないし、ジメジメして気持ち悪いし、雨が止んでも水たまりにぬかるみで… 靴も汚れちゃうし!私…雨なんか大嫌い」
余程外に出られないストレスで声を荒げて一息に不満を口にする。

「あー…ですが、雨は植物の成長には必要不可欠ですし…飲み水だって…」
「あなたは雨の味方なの?」
「味方って…」
思わず苦笑いしてしまう時雨。

「やはり…俺と貴女は正反対なのでしょうか…」
「え?」
彩紅が余りにも雨を嫌がる為に時雨は悲しげに呟いた。そして彩紅もその一言を聞き逃さなかった。
「どういう…意味なの?」
「あ…っ!いえ…その…」
ごまかそうとするが、純粋で真っすぐな瞳に見つめられると嘘もつけなくなる。
小さく息を吐いて、時雨は悲しげに零し始めた。

「貴女に…雨が嫌いと言われると…俺は凄く悲しくなってしまうんです…」
「何故?」
「俺は雨みたいに陰湿な人間だと、貴女に…思われてるような…」
彩紅から視線を逸らした時雨を心配して、彩紅は顔を覗き込んだ。
そうすると時雨は「笑わないでくださいね」と前置きをして続けた。

「俺の名前…雨という文字が入っているでしょう?…だから貴女に雨が嫌いと言われると 俺まで嫌われてる気がして…悲しいんですよ」
真剣な時雨と対照的に彩紅は笑いたい気持ちになってしまった。
「やだ…そんなこと言われたら雨が好きになりそうよ、私」
「ほ…本当ですか!?」
彩紅の一言だけで時雨から悲しい表情が消えた。

「雨は虹を掛けてくれるし…貴女の好きな花だって雨が降らなければ綺麗に咲かないんですよ!?」
「えぇ、そうね。雨を見直したわ」
良かったと笑う時雨を見て彩紅はまた笑いたくなってしまった。

「じゃあ雨が止むまでお茶を飲みながら色んな話を聞かせてくれる?」
「はい!話す事がなくなったら室内で出来る娯楽でもしましょう」
「ボードゲームもカードゲームも受けて立つわ!負けないんだからっ」
そう言って彩紅は二人分のお茶の支度をする。

その姿を見ながら時雨はさっき言いそびれた言葉を頭の中で呟くのだった。

「貴女は雨のような俺とは正反対だ。貴女は…太陽の様な人だから。俺も本当は雨が嫌いだったんです。 でも貴女が好きだと言ってくれたから…。だからこれからも…ずっとそのままでいてくださいね」





K家妹
妄想日時:’08.2.3
妄想場所:K家姉宅

六月って言ったら雨か…。
雨と言ったら時雨か。文字的に。
と言う流れで出来たSS。
今月も時雨と彩紅さんが書けて幸せでした♪