花帰葬
         
08.12.6        
 告げる鳥

十の国にある、とある一軒の家の小さな部屋の前。
一羽の黒い鳥の影にはっとした。
半ば条件反射のようにテラスへ出る硝子戸を開けると、闇夜に羽ばたく鳥が静かにテラスの手摺りに降り立った。
「もう…お会いする事はないと…以前そう話したつもりでしたが」
男がそう苦笑いを浮かべ話しかけると、テラスの手摺りには黒いコートの男が一人座っていた。
「私としてもそうしたかったんだがね」
コートの男もそう言うと寂しげに微笑んだ。

「立ち話も何ですから、どうぞ中へ」
「いや、ここで結構。長居するつもりもないんでね」
「では、早速用件を伺いましょうか。…黒の鳥よ」
「…。暫く会わない内に随分せっかちな男になったなァ、キミは」
そう言いながら黒鷹は腰掛けていたテラスから「よいしょ」と立ち上がる。
「あなたがここに来たと言うことは………あの子は…」
「………。今日はあの子の言葉を届けに来たんだ」
「俺に?」
男は少し驚いたように声を上げた。
そんな男に黒鷹は静かに笑顔で頷いた。
その姿に戸惑いの表情を浮かべるが黒鷹は一呼吸置いて話し出した。

「俺は玄冬であることに感謝している。こうして自分で選べる事に」
「………」
「親思いのいい子じゃないか。これで救われる。私も…キミも…」
俯く男に背を向け黒鷹は言った。
「俺は…あの子をそんな風に育てたあなたに感謝するべきなのか…それともやっぱりあなたを恨むべきなのか…」
「…どちらでも」
「…あの子は自分で選んだんですね…母親のように。なら…俺も選ばなきゃいけないですね…」
「いや、ちゃんとキミは選んでいるよ。生きると言うことを」
「そうですか…」
お互いにもう顔を見合わせる事もない。
黒鷹の体を光が包む。
「今度こそもう二度と会うこともないだろうが、達者で暮らし給えよ、父上殿」
「あなたも。…とは言うべきではないんでしょうね」
フッと笑うと羽音だけをそこに残し、黒い鳥は何処へと飛び去った。



「兄さん?」
部屋が開き声がした。
男は振り向かない。
「兄さん1人?誰かの声がしたけど…」
ガラス戸が開いて白いレースのカーテンが靡いていた。
「兄さん…どうしたの?大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だよ」
「窓全開にしてテラスに出て、何か面白いものでもあるの?」
「いや…。ただ、今までどこまでも続く暗闇に見えたこの夜空が…暗闇じゃなく濃紺に見えると言うことに気付いたんだ」
「え?僕にはよくわからないけど…。…兄さん、風邪引く前に部屋に入りなよ?」
「うん。ありがとう」



その夜、男はいつまでも濃紺の空を見ていた。




K家妹
妄想日時:’08.10.2
妄想場所:自室

時雨君の誕生日ネタを考えていて出来た話だとはお釈迦様でも思うまい(笑)
これが誕生日ネタなら、祝ってないですからね(笑)
でもK家妹の割に時雨君をカッコ良く書いてると思いませんか???
某G氏じゃ、いつも灰名パパに空に浮かばせられる扱いだし(笑)