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花帰葬 救世主×玄冬 |
| 09.10.12 |
| 花帰葬パロ劇場 怪盗編・1 |
それは、木々も色付いた葉を落とす晩秋の事。 古いというより歴史を感じさせる重厚な趣きにして、決して華美ではないが豪奢な佇まいの屋敷は、 ひどく賑わっていた。 周囲はお仕着せの軍服を纏った人々が周囲を警哨し、また中も同様にあちらこちら不審なものはないか 歩き回っている。 その屋敷の一室では、物々しい雰囲気が立ち込めていた。 「大丈夫なんでしょうね」 小柄な赤毛の女性は、目の前にいる強面の軍人に威勢良く食ってかかった。 その女性が守るように抱きしめているのは、長身の青年。 青味がかった黒髪と深い蒼の瞳の青年は、むしろ母親である女性の威勢に引いている感すらある。 喰ってかかられている軍人も同様だ。 「万全は期します」 「当然よ!」 「おい…お前、隊長さんが困っているよ。少しは落ち着いて…」 「落ち着いていられるわけないじゃない!家の宝が狙われているのよ!!」 どうどうと落ち着かせるように女性に近付いたのは、おっとりとしたやはり長身の男性であった。 だが、妻に一喝されて、困ったように我が子を見る。 その父の視線に、青年も肩を竦めるだけであった。 そもそもの始まりはとある晩に届けられた、一通のカードであった。 カードには短くこう書いてあった。 ―――次の満月の夜 大切なものを頂きに参ります 片翼 『片翼』とは、ここ近年この国の城下町を騒がせている怪盗の名前であった。 強欲な貴族や悪徳な商人の家に押し入っては、その家で最も価値のある宝を奪い去る。 その『片翼』のカードが、この貴族の家にも届けられたのだ。 常日頃『片翼』を取り逃がしては辛酸を舐めさせられている警備隊は、当然厳戒態勢を取った。 だが、実際のところ警備隊隊長は首を捻っていたのだ。 この家は貴族とはいえ、『片翼』の狙いの対象になるとは思えなかったからだ。 血筋良く歴史は古いが、既に威厳を保つだけの財産も持たない名ばかりの貴族。 数年前に今は亡き先代が金銭目当てで娘を貴族のステータスを欲していた成金の商人の息子と結婚させたが、その商人も 汚い商売が公になったためこの国に居られなくなり、今となっては他の国で細々と商売をしているとの話だ。 ここにいるのは、政略結婚とはいえお互い愛し合い、一人息子を得て、慎ましく暮らしている 家族がいるだけ。 価値ある宝物があるようにも見えず、とても『片翼』が狙うような家とは思えない。 だが、間違いなくカードは届いた。 「奥様、最後にもう一度伺いますが、この屋敷には『片翼』が狙うような品は何一つ無いということですね」 「ええ、先祖代々の遺産は父の代までに既に売り払っていますし、夫の家からも特に由緒ある代物や 宝物の類を譲り受けたという事はありません。お恥ずかしい話ですが、我が家はこの屋敷を維持し、 生活していくのが精一杯です」 ならば…やはり怪盗の狙いは、それなのか。 何度も問答を繰り返し、通報にあった内容と齟齬がないのを認めるしかなかった。 バンッ!!っと彼は重厚なアンティークのテーブルに遠慮なく拳を叩きつけた。 「くそっ!!馬鹿にしているのか、奴は?!!」 そんな彼を傍にいた部下らしき丸眼鏡の男が、まぁまぁと宥めている。 が、一向に効果は無く血管をぶち切らん勢いで隊長は声を荒げた。 「何だって、そんなものを盗むんだ!!」 「そんなものとは失敬な」 我慢ならないというように、負けじと女性も声を上げた。 隊長は眉根を寄せて、赤毛の女性の信じがたい一言に構える。 そうでなければ正気を見失いそうだったから。 「この子は私たちの唯一にしてかけがえの無い宝です!!」 女性は、奪われまいとするように、青年の腕を強く握った。 青年の意思の強そうな顔立ちは母親と同じだが、長身と茫洋とした雰囲気はむしろ父親譲りかもしれない。 しかしそれにしても青年は父と母、どちらにもお世辞にも似ているとは言い難かった。 それでも間違いなく実の子である青年は、母親の気勢に困惑しているようだった。 失礼しました、と赤毛の貴婦人に謝罪し、隊長は今回怪盗に狙われることとなった青年に向き直る。 「それでは、何度も申し訳ないが、当時の事をもう一度話してくれないか」 「ああ」 ようやく口を開いた青年は、事の重大さを理解しているのかいないのか、妙に落ち着いてみえる。 それが妙に引っかかりはしたが、隊長は黙って既に何度も確認している青年の話に耳を傾けた。 |
K家妹 妄想日時:’09.12.7 冒頭過ぎて何がなんだかですかね(苦笑)。長くなりそうなので細切れにアプの予定です。 イメージは石鹸屋の「レモン」という歌から。 個人的にはあの悲劇が無く、玄冬が両親と一緒に暮らせたら…をイメージしてます。 さて、次回はあの子が出てきますよー♪ |