花帰葬
玄冬×銀朱         
08.1.25       
 或るG氏の結末

「…くそっ!!!!!!」

銀朱は執務室を勢いよく飛び出し、駆け出して行った。




遡る事、この日の朝。
先日、玄冬が銀朱に「あんたが好きだ」と言ってから二人の関係はギクシャクし始めた。
…と言っても意識してしまっているのは主に銀朱で、玄冬は何事もなかったかのように振る舞っている。
それでも軽く玄冬を避けようとしたり、警戒するような素振りを見せられると、玄冬も表情を変える。

そして今朝方事件は起こった。
とうとう玄冬が行動に出たのだ。
「そう言えば、俺はまだあんたの気持ちを聞いていなかった」
「………はぁ?」
「だから…俺はあんたを好きだと言った。あんたの気持ちはどうなんだ?」
「………知るか馬鹿者!!!!」
「なら、わかるようにしてやろう」
「なっ…!!!!!…っ」

玄冬は銀朱が油断した隙を突いて、銀朱の唇を奪った。

「…どうだ?わかったか?」
「貴様っ!何をするっ!!…こんなのでわかる筈がなかろう!!」
「ならもう一度してやろうか?」
「…っ!いらん!……もう出ていけ。そして自分の家に帰れ」
銀朱は玄冬に冷たく言い放った。
これ以上、自分の心を掻き乱さないで欲しかった。
玄冬の心には大きな衝撃だった。確かにやりすぎた所もあった。しかし、銀朱の気持ちが知りたい、その想いだけだった。
いつもなら、銀朱が馬鹿者!と怒って、それで笑い話のように丸く納まっていたのだが、今回は違う。
冷静かつ真面目に帰れ。と言い付けたのだ。言い訳も謝罪も通るような雰囲気でもない。
「…わかった。すまなかったな。…じゃあ俺は言われた通り、家に帰るとしよう」
「……っ」
「世話になった」
玄冬は銀朱に向かって一礼し、静かに執務室を出て行った。


昼。最近は玄冬が多忙な銀朱の為にと自ら腕を奮い食事を作り、執務室まで運んで来てくれた。
しかし、玄冬はもういない。
以前なら昼食を摂らずとも平気だったが、玄冬のお陰で時刻がくるとお腹が空くようになっていた。
仕方なく銀朱は食堂に昼食を食べに行った。

「…作ってくれた者には悪いが…うまいとは言えんな。あいつの料理はもっと………」
言いかけて止めた。
そして味わう隙も与えぬ程の勢いで食べ、あっという間に完食した。

午後。
無性にお茶が飲みたくなる。そしてお茶が入るのを待ってしまう。
待っていてもお茶が出てくる訳でもないと言うのに。
しかし、これも玄冬のお陰で癖になってしまった手前、ここでお茶を飲んでしまったら負けのような気がした。

時間だけがただ静かに流れて行った。
銀朱の仕事もなかなか捗らなかった。
玄冬の事が気になってしまって仕方ない。
考えないように仕事に集中しようとする程にミスも増え、空回りしていた。

「…くそっ!!!!!」
そして耐えきれなくなった銀朱は、勢いよく執務室を飛び出し、駆け出して行った。




「あいつは…いったい何処にいるんだ!?…やはりもう家についてしまっただろうか…」
立ち止まって考えるような余裕はなかった。
早く見つけたい。少しでも早く会いたい。そんな想いが銀朱を走らせていた。




「…て!おい、ちょっと待て!貴様!!」

銀朱の不安を余所に、玄冬は意外と近くにいた。
銀朱が叫ぶと玄冬は立ち止り、銀朱を見た。
「なんだ。まだこんな所にいたのか…」
「待てと言ってみたり、遅いと言ってみたり…探していたのか、いないのかわからない奴だな」
落ち着かず、息も荒い銀朱に玄冬は表情も変えず真面目に話す。

「早く見つかって良かったと言う意味だ。この場合」
「…墓に手を合わせてきたからな」
「………」
「家に帰ったら次はいつ墓参りに来れるかもわからんからな。それで、隊長は俺に何の用だ?」

明後日の方向を見ながら切ない表情を浮かべたまま、玄冬が本題に話を戻した。

「う…うむ。あぁ…それなんだが…」
ハッキリ言って勢いよく飛び出して来ただけで、話す内容を考えていなかった。

「貴様がいないと…飯がまずくて食えん」
「………」
普通の人なら「はあ?」と聞き返したくなるような言葉を、玄冬は黙って聞いていた。
「茶だって…貴様が煎れた茶が飲みたい」
「だから何だ?」
「…っ!…ずっと俺に飯を作ってくれると言っただろう!!なのに貴様は何処に行こうとしてるんだ!!」
「家に…」
「馬鹿者!」
何かを言いかけた玄冬を遮って銀朱が一喝した。
「貴様の家は…彩にあるだろう。…なのに何処の家に帰ろうとしているんだ!…自分に出来ることをしろと言った筈だ。 やるべきことを放棄して何処へ行くつもりだ?」
「隊長…」
「隊長って呼ぶな!…俺の為になることをしてくれるんだろう?」
銀朱なりに精一杯の帰ってこいという言葉だった。

「…そうだったな。すまない」
「わ…わかればいい」
照れ隠しをしているが顔は赤い。
「帰るか。俺達の家に。…あんただって仕事放置してきたんだろう?早く戻らないとまずいだろう」
「あ…あぁ。だが…名前で呼べ」
「じゃあ、あんたも名前で呼んでくれ」

二人は肩を並べて歩き出した。

「言っておくが、俺はまだ落ちてないからな」
「あぁ。それなら俺に惚れさせてみせるさ。一生をかけてな」
「それから…不意をついて唇奪うのはやめろ。何事もしっかり相手の同意を得てからだなぁ…」
「同意を得ればいいのか」


玄冬が急に立ち止まる。


「キスしてもいいか?銀朱」


「うっ…」
名前を呼ばれてドキッとした。
理性が断われと言っているが、それ以上の何かが込み上げてきてダメとは言えなかった。
「一度だけだぞ…」

こうして二つの影が重なった。
そして二人は帰るべき場所へと帰って行った。




K家妹
妄想日時:’08.1.16
妄想場所:自室

或るG氏シリーズの最終回です。
相変わらず微妙にズレた二人です(笑)
見事に大団円!
最終回はシリアスにいかせて頂きました。長々とお付き合いくださいましてありがとうございます。
G氏シリーズは永遠に不滅です(笑)またお会いしましょう!


或るG氏の衝撃 おまけのG氏(日中編)