| まるマ |
| 04.12.23 |
| Xmas Time with U・1 |
「何コレ、すっげぇごちそうじゃん。いや普段も充分ごちそうなんだけどさ」 夕食の時間をメイドに告げられ、晩餐室の扉を開けたユーリは感動の声を上げた。 普段にも増した彩りの良い料理の数々、テーブルの美しい装飾。 「どうしたんだよ、今日って誰かの誕生日?」 きらびやかな食卓に目を奪われながらも問い掛けてくるユーリに、 既に室内で待っていたウェラー卿は、 「まぁまぁ座って」 と愉快そうに笑った。 腑に落ちない表情(かお)でコンラッドを見たまま、ゆっくり椅子に腰掛けると、 「で、今日は何だってまたこんなに豪勢なわけ?」 と改めて問いただす。 すると少々悪戯めいた瞳で、コンラッドは言った。 「どうぞ、ご自身の腕時計で日付を確認してみて下さい」 「日付って…」 言われた通りユーリは、自身の右手首に巻きついてるGショックの表示板に目をやる。 「今日は…12月の…にじゅう………」 表示を目で追ううちに気付いたのか、急にユーリは立ち上がり、大きな声を出した。 「あーっ!!今日って12月24日!!クリスマス・イヴじゃん!」 「そうだよ、陛下」 自分の仕掛けが上手くいったのが嬉しいのか、コンラッドは晴れやかに種を明かした。 「なるほど、だからごちそうなんだ。そーいや、眞魔国(こっち)にいると ついつい地球(あっち)の日付忘れちまうもんなぁ」 ユーリは得心いったとばかりに頷き、それからはたと気付いたように 「あれ?でもこっちでもクリスマスってあったっけ?」 と呟いた。 「無いよ」 コンラッドが簡潔に答えると、 「じゃあさ…」 と不思議そうにユーリはコンラッドを見る。 「こっちの人達ってクリスマスのこと知らないよな」 「う〜ん…まぁ…」 ユーリの疑問を受けて、昼間の狂乱騒ぎを思い出すコンラッドであったが、 (結局『クリスマス』を誤解したままだったし、知ってるとは言えないだろうな、アレは) と言う結論に達し、 「そうだね」 と肯定を口にした。 「じゃあさ」 不意にユーリが微笑った。 「この準備、コンラッドがやってくれたんだな。だってクリスマスのこと知ってるのなんて、 地球に行った事のあるあんたくらいだろうし。…ありがとうな」 「いや、俺一人が用意した訳じゃないですから」 笑顔につられてか、コンラッドもまた、微笑った。 嬉しそうなユーリを見ることが、自分にとって嬉しい事だとでも言うように。 「さぁどうぞ、冷める前に召し上がって下さい、陛下。特にこの子羊の葡萄酒煮はお勧めですよ。 厨房係のエーフェが陛下に召し上がっていただくために、改良に改良を重ねて完成させた逸品です。 本日の夕食に間に合わせることが出来て嬉しいと言っておりましたよ」 「へぇー。確かに見た目も綺麗だし美味そうだなぁー。いただきまーす」 食事を宣言し、さっそく勧められた料理に手を伸ばす。 「………美味い、マジで美味いよ!コレっ」 口に頬ぼったものを飲み込み、瞳を輝かせて素直な感想を口にすると、 「良かった。彼女にも良く伝えておきますよ、きっと喜びます」 とコンラッドは言った。 それからユーリの耳元に口を寄せると、そっと 「陛下、この城…いや、この国の全ての人々が、例えばこんな小さなことでも 陛下に喜んでもらいたいと思ってるんですよ」 と囁いた。そして小さく笑って 「もちろん、俺もです」 とつけ加える。 その言葉に意表を疲れたのか、先割れスプーンをくわえたままユーリが動きを止めた。 普段言われなれない言葉に照れたのか、ユーリの顔はみるみる赤くなり、ついには耳まで染まる。 その姿勢のままコンラッドをじっとりとにらみつけると、コンラッドは余裕の表情で 「本当のことです」 と言った。 動じないコンラッドに、ユーリははぁとあきらめたように息を吐いた。 そして、強い瞳でコンラッドを見て、 「大体、さっきから言おうと思ったんだけど…」 「はい?」 小さく肩をすくめて応じるコンラッドにきっぱりと言い切った。 「陛下って呼ぶなっていっつも言ってるだろう、名付け親」 コンラッドは、さも今思い出したかのように、わざとらしく軽く拳を手のひらに打ち付け、 「そうだったね、ユーリ」 と微笑んだ。 「そうだって、それに折角のクリスマスなんだしさー、「陛下」何て言われたら気分台無し。 あ、そうだ、俺ばっか食ってたけどコンラッドは?食わねぇの?」 「ユーリのお招きがあればね。そうそう臣が主と同じテーブルにつけるものじゃ ないんだよ」 「だーから、そういうこと言うなっていつも俺、言ってるだろう」 不意に先割れスプーンを置き、ユーリは怒涛のように語り始めた。 「ウチは親父が残業でいつも遅くなるんだけど『飯は一人で食べたら美味いのも半減』って 言っておふくろ、飯食わねぇで親父待ってんだぜ。 だから俺はいつもしょーりと一緒に飯食ってんだけど、あいつ『食べ方が汚い』だの 『箸の作法がおかしい』だのうるさいんだよなぁ。 あ、いや、それはどうでもいいんだけど、 つまり俺が何を言いたいかってーと、あー、身分が違うと飯を一緒に食えないって言うんならさ、 王様っていつだって飯を一緒に食う奴がいないって事で、それって孤独だよなーとか …なに笑ってんの?」 押し殺して笑っていた所為か、目の端ににじんだ涙を指でぬぐいながら、コンラッドは言った。 「いや、ユーリは向こうでちゃんと幸せだったんだって再確認したらちょっと嬉しくなってね」 「そっかぁ…?」 ユーリはいまいち腑に落ちない風であったが、「まぁいいや」と一人ごちて 「つまり俺が何言いたいかって言うと、俺一人でこんなごちそう食いきれるわけ無いし、 一人で飯食ったってつまんねーし、それって作ってくれたその…エーフェさんとかみんなに 申し訳ないというか…」 全ての言葉を言い終える前に、ぽん、とユーリの頭に手を乗せて、コンラッドは言葉をさえぎった。 「わかったよ、ユーリ。そろそろそれぞれの政務も終わった頃だし、みんなで食事にしよう。 …俺もいいかな?」 「当然だろ。言っとくけど、今日だけじゃなくこれからずっとだからな」 「…ありがとう」 「なんであんたが礼を言うんだよ。それはこっちのセリフ」 ユーリは立ち上がり、銀の混ざったハシバミ色の瞳を真っ直ぐに覗き込んだ。 「改めてありがとな、コンラッド」 ユーリの顔に満面の笑みが浮かぶ。 見つめ返したユーリの黒い透明な瞳に、同じように微笑っている自分の姿を見て、 (やはり、感謝するのはこっちだよ) とコンラッドは思った。 自分がこんな顔をして笑える日が来る事を、17年前の自分は想像できただろうか。 そしてコンラッドは晩餐室の扉を開けた。 主の望む温かな食卓を用意するために…。 |
妄想日時:不明 妄想場所:色々 これ書き上げた後に、某番組の節約バトル「おかあさんといっしょ」をみて 竹山家の話にほろりとしたり(「ありがと、ママ」のセリフは涙モノ) ってこれ、見てないとわからないネタやね。結論は、一人で食べるご飯は 美味しさ半分って事だす。…いつ書き上げたかバレるなぁ。 ふぅー、ギリギリクリスマスには間に合いそうかな。 『眞魔国でもクリスまス?!』その後みたいな話になっております。 本当はクリスまス本を出そうと思ったんですが、今年もあえなく ギブアップ …来年こそはぁ!その時には今回のネタそのまま漫画にしてるかも しれないケド。 ふ、それよりもゆーちゃんの誕生日本を…来年こそは…!!(野望) 今回の消えたセリフ→(22行目後に) 「その代わり、こちらの祭事は段々詳しくなってきてるけどね」 |