まるマ         
04.12.25          
 Xmas Time with U・3

「これで良し…っとお」
鏡に映った自分の姿を確認して、ユーリは満足そうに呟いた。
赤い服にぼんぼりのついた赤い三角帽、地球の人間なら誰でも知っている
サンタクロースの衣装だ。
大きな白い袋をひょいっと担ぎ上げて、こっそりと部屋を出る。
いつもなら扉の前を守る衛兵は、今はいない。
抜き足、差し足で慎重に歩を進めてゆく。
廊下の向こうから人がやってきたら、すばやく身を隠す。
ハードボイルドな探偵気分を味わいながら、ユーリは目的の場所にたどり着いた。
簡単に言えば屋上のような場所だが、目の前には更に壁があり、
その壁には登るためのわずかな 出っ張りがついている。
終点をを見上げて、ユーリは身震いした。
それを冬の夜気の所為にしながら一人ごちる。
「約…5、6メートルってとこか、結構高いな」
「ですから登るのはやめて下さいね、ユーリ」
誰も聞いていないはずの独り言に返事が返ってきて、ユーリはギョッと
声のしたほうを見た。
そこには長身の名付け親が、腕を組み、扉にもたれるように立っている。
「コ…コンラッド…」
「守衛に聞きましたよ。陛下の出してくれたお茶を飲んだら、腹が痛くなって
止まらなくなったって。 しかも、代わりの守衛は自分で呼ぶとも言ったそうですね」
「うっ!」
ばっちり見抜かれて、ユーリは息を詰まらせた。
もはや肯定してるも同然のその態度に、苦笑いを浮かべるコンラッド。
「まったく…こんな古典的な手を使ってまで、お忍びする理由はわかってます。
でも、ちゃんと彼に謝ってくださいね、まだトイレの中で苦しんでますから」
「うん…」
ユーリはしょぼんと頷く。
「しかし、どこで手に入れたんですか、下剤なんて」
落ち込むユーリを見かねたのか、その頭に手を乗せ、子供をあやすように軽く叩く。
その手の下から、ユーリはコンラッドを見上げた。
「アニシナさんに相談したんだ、誰にも知られずに部屋を抜け出す方法は無いかって」
「あ…アニシナに」
うめくようにコンラッドは繰り返した。
なるほど、アニシナの薬ならあの苦しみようもわかると言うものだ。
「あっ、アニシナさんは悪くねーぞ!今回のは全部俺の所為!みんな俺が
やったんだからな!」
自分の所為でアニシナが咎められると思ったのか、ユーリは必死に弁護した。
「わかったよユーリ、でも…」
コンラッドは小さくため息をつくと、やや遠い目のする。
「アニシナに相談する前に俺に相談してくれれば、もう少し平和的な方法があったのに」
「う…スイマセン…」
ユーリも限界ギリギリの凄まじい形相をした衛兵を思い出したのか、
反省の色しきりと言った面持ちで、コンラッドと、そして哀れな衛兵に心から詫びた。
「さて」
もう一度、ぽんぽんと優しくあやして身を離すと、コンラッドは指におとがいを乗せた姿勢で
ユーリの姿を見た。
「グレタにクリスマスのプレゼントをするために、サンタの格好をしたんでしょうけど」
「う」
「だからって本物のサンタよろしく、暖炉からグレタの部屋に入ろう何て思わないで下さいね。 ここから煙突までも、それなりに高さはありますが、煙突から暖炉までは相当高さが あるんです。万が一落ちて怪我でもされたら、俺はユーリの両親に合わせる顔が無い」
「ううっ」
「意気込みはわかりましたから、どうぞグレタの部屋へはドアから入ってください」
「う〜っ、コンラッドには全部バレバレな訳ね」
思考の全てを読み当てられて、ユーリはがっくりと肩を落とした。
「自分の為にユーリが怪我をしたと知ったら、グレタはかえって悲しみますよ」
「…ケガをするのは確定なわけね。ま、コンラッドの言うことにも一理あるか。
仕方ない、正々堂々ドアから入るよ。…ちぇー、煙突から入るってのは
なかなか浪漫だと思ったんだけどな」
そう言うと、ユーリは小さくくしゃみした。
「ああ。いつまでも外にいたら風邪をひきますね。そろそろ中に入りましょう」
「そーいや段々冷えてきたなぁ」
今までは自分のアイディアに興奮していた所為か寒さを忘れていたが、 冷静になった今、
冬の冷気が殊更身に染み、ユーリは肩をさすりながら、暖かな城の中へと 戻った。
そしてコンラッドに別れの挨拶をすると、愛義娘の部屋へと駆け出した。

朝、ユーリは固いものに触れて目が覚めた。
冬の朝独特の透明な陽光が、ベッドを被う厚手の布地をも通して、ユーリの視界をクリアにする。
昨夜は起こすことなくグレタの枕もとにプレゼントを置いた後、部屋に戻るとすぐに睡魔がやって来て ぐっすり眠ってしまった。
誰が枕もとに来ても気付かないほどに。
だからユーリを目覚めさせたそれを目にして、声を失うほど驚いたのだ
綺麗なオーガンジーのリボンで飾られた箱。
ユーリに対しての贈り物である事は、リボンにはさまれたクリスマスカードを
見るまでもなくわかった。
こんなコトをする人間には、一人しか思い当たらない。
手早く着替えて、メイドに朝の挨拶をすると、コンラッドを捜して部屋を出る。
コンラッドはすぐに見つかった。
「コンラッド!!」
「ああ、ユーリお早う。…その様子だと、もうバレたかな」
コンラッドはユーリを見ると、いつものように笑う。
走った所為で乱れた呼吸を整える時間も置かずユーリは言った。
「今朝…枕もとにあったプレゼント、あれ、コンラッドだろ?」
「ああ、落ち着いて…その通りですよ。簡単にバレてしまいましたね」
「クリスマスに贈り物するコトを知ってる奴なんて限られてるっての。ありがとな」
「それが言いたくて、わざわざ走ってらしたんですか」
「だってさ、俺、グレタのことばっかでコンラッドの分用意してなかったし…」
申し訳なさそうにユーリが言うと
「なんだ、そんなこと…。いいんですよ、俺はもう充分もらってますから」
そう言ってユーリに笑いかけた。
「へ?俺、コンラッドに何かあげた記憶ないけど…」
そうユーリが聞き返すと、
「この16年もの間、俺はユーりにクリスマスカードの一つも送ることが出来なかった。 でも今年は、一緒にいられるし、名付け親らしいこともすることも出来る。俺にとっては それで充分なんです」
「名付け親らしいことって…?」
「本当であれば名付け親は記念日ごとの贈り物をするものでしたよね。でも俺は、ユーリの誕生日すら この地で喜ぶことしか出来なかった。だから、こうしてそばにいて、何か出来ることが嬉しいんです。 これは今までお祝いできなかった分と思ってください。だからユーリが気にすることは無いんですよ」
そう言ってただ静かな、けれども温かい眼差しを向けられると、
それ以上ユーリは何も言えなくなった。
ただ、コンラッドの気持ちが嬉しくて、ユーリは心から
「ありがとう」
と言った。
その時ドアが開く。
愛しい義娘(むすめ)が駆け込んでくるのをユーリは笑顔で迎えた。
「ユーリ!グレタのところに「さんたくろぉす」のおじいさん来たよー」

その日、ウェラー卿コンラートの元に小さな包みが届いた。
中には手作りとわかる10枚綴りの「マッサージ券」なるものが入っていた。
彼は心から嬉しそうに微笑むと、掛けていた椅子から立ち上がった。
送り主に「ありがとう」を告げるために…。




妄想日時:不明
妄想場所:色々
ちゅうわけで無理矢理完結です。ここまで読んで下さってありがとうございました。
グレタへの贈り物がオルゴールなことや、ユーリにとって「自分のお金」というものが
無いに等しいために、コンラッドの贈り物が手作りとなった(しかも発想が貧困)
ということは もはや裏設定として闇に葬むります。
しかし当初と全然違う話になったなー。


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